シングル スマイル

目指すのはジャンガリアンな生き様

人を好きになるという事

ここの所寝る間も惜しんで読みふけっていた小説は、村山由佳という作家のおいしいコーヒーのいれ方シリーズ。文庫本は8作目までしか出ていないのだけれど、単行本では10作目まで先行していて、やむなく僕は綺麗なイラストがついているのは良いのだけれど価格が倍になるというか、一見すると少女コミックの様な外見で中年のオッサンがレジに持っていくのが躊躇われるのだけれど、今すぐ続きが読みたいのだから仕方がない。結局文庫8冊と単行本2冊を買い、一気に10作目まで読みきってしまった。
高校3年の「僕」が5才年上の従妹と恋に落ちる、という最初はありきたりな恋愛小説だった。そんなウマい話が有ったらいいのにね、的な。でも話が進むにつれて恋愛の良い所だけじゃなく、本来なら影の部分である裏側の「僕」の心情がとても上手く描かれていく。相手が年上故の背伸び。中途半端な立場と、配慮に欠ける自分の言動に対する自己嫌悪。相手の好意に対する自信の無さ。生活の全てが相手の事で一杯になってしまう色ボケ状態と、ともすると置いていかれそうな焦り。でも欲情には流されやすく、信じていると良いながら嫉妬深くて傷つけあって、電話が来ない、メールが来ないというだけでもうやりきれない程の不安に苛まれる。
どうしてこうまでリアルに描写できるんだろう? 僕は過去に全く同じ経験が沢山あって、それはもう自分の事を書かれているのではないかと思うくらい同じ様に思い悩んだり、ヘコんだり、じれったい思いをしたことがあって、僕は小説を読みながら「僕」と同じ様に不安に駆られ、「僕」と同じ様にヘコみ、「僕」と同じ言葉を心の中で叫んで、もう目が離せなくなってしまった。
そう。人を好きになるって、良い事ばかりじゃないんだ。でも、それでも人を好きになるって素敵なことなんだけどね。