シングル スマイル

目指すのはジャンガリアンな生き様

修行

トライアルに乗るといっても、絶壁の様な崖を上ったり、足を着かずに停まったり、ピチピチの派手なウェアを着たりするのが目的ではなくて、そりゃそんな事が出来るなら言う事は無いけれど、僕にとっての当面の課題はバランスを取る練習と、フロントアップ。どちらもオフロードを安定して走るには必須の技術だ。路面状況が悪くなればなる程バランスを取る技術が要求されるし、スムーズに走るには前輪を浮かせてギャップをやり過ごす技術も必須になる。僕はこの2つの技術に関して著しく弱く、また、DRはそれらの練習には向いていない。人は自分の苦手な物には目を背けたがるもの。だけど、このツーリングで僕は自分の至らなさをまざまざと見せ付けられる事になった。
別に普通にツーリングしたり、イージーなエンデューロレースを走る程度ならそこまでの技術は要求されない。オフロードに限らず、例えば60〜80km/h程度のカーブが連続する様な峠道は、特に何も考えなくても走りやすい。でも、これが10km/hまで減速しなければいけないヘアピンカーブなら? しかも下りなら? 更に路面が濡れていたら? 対向車が来ていたら? 落ち葉や砂利が散乱していたら? それでも安定してスムーズに走る自信が有るだろうか。そういうシチュエーションは楽しくない。楽しくないから出来るだけ避けて、楽しくて気持ち良い事だけやっていたい。でも、いつまでも避けていたら上達もしない。別に上達しなくてもバイクには乗っていられる。だけど、好きなバイクの事で自分をいつまでも誤魔化せない。
最終的に一番必要になるものは「恥や外聞を捨て去ること」で、周りがいくら速くても危なかったら停まるような速度まで減速するとか、最悪バイクを降りて押したって構わないんだし、そんな事は当たり前なんだけど、でも経験が長くなればなるほど案外その「当たり前」な事が出来なくなるもので、つまり「DR」という見栄やプライドを捨て去ってトライアルバイクで転げ回る事が必要なのではないかと思った僕は、相当なMか、修行僧になれるかもしれない。