シングル スマイル

目指すのはジャンガリアンな生き様

3倍

僕の残業代が高いのか安いのか僕には比較するべきものが無いので分からないのだけれど、そもそも僕の仕事は時間当たりで計れる様なものでもないのです。製造業でも製造ラインなら時間=生産量となり、賃金も比例するでしょうけど、僕らの仕事は時間が掛かれば掛かるほど「能無し」ということになります。仕事が出来る人はより短時間で作業出来るので、仕事が出来ない人の1時間と、仕事が出来る人の1時間では、同じ1時間でも全く内容が異なってくるはずです。
僕の仕事は工場設備の保全なのですが、機器の製作から改善、修理まで何でもやらねばならず、特に修理に追われています。その設備の修理作業、人によってとても大きな差が出るのです。修理は、不具合の原因が分かれば作業の半分以上は終わった様なものです。原因が分かれば、あとはそれを直すだけなのですから。直すだけと言ってもそこにも細かなノウハウや技術は要求されますが、でも、まず原因が分からなければ直しようがありません。いつまでたっても直りません。その不具合の原因をいかに早く、確実に見つけ出すかが腕の見せ所なのです。先日の深夜まで掛かった修理は5時間もの時間を要し、もう少し改善の余地は有ったと思うのですが、そもそも最初にその修理に取り掛かったのは職場の後輩君で、後輩君では手に負えないので僕に電話が回ってきた訳で、僕が5時間掛けて直した所を、じゃあ後輩君なら10時間で直せるのか、といえば直りません。直し方が分からないのですから。直し方と言うよりも、不具合の原因の探し方が分からないのですから、いつまで経っても直らないのです。そうすると、僕の作業する1時間と、彼の作業する1時間は、金額では計れない大きな差が生じます。
「僕は出来る人間だ。」と言いたいのではありません。僕は今の会社に入って10年、前の会社を含めると14年ほど経験を積んでいるのですから、後輩君と同じレベルの仕事をしていたのではそれこそ能無しです。僕が言いたいのは、最終的には「人」だということです。「出来る人」が居るか居ないか。「出来る人」を育てようとするかしないか。僕は事有る毎に「新しい人を入れてくれ」と要望してきました。出来ない人がいくら沢山居ても、出来ない人がいくら時間を掛けても、出来る人と同じ作業をする事は不可能です。設備を新しい物、高効率な物に替えるのは簡単です。お金を掛ければ良いのですから。だけど、それを維持していく人間は、お金を掛ければすぐに出来るというようなものではないのです。職場の後輩君は既に3年近い経験を積んだはずですが、一人で作業を任せられるレベルには達していません。10年先の事を考えて今から人材の育成に取り組まなければならないはずなのですが、僕らの仕事は分かる人にしか分からないものですから、上の人には理解できないのでしょうね。そのツケを僕が背負わなければならないのなら、パートの3倍の賃金でも安過ぎるかもしれません。