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目指すのはジャンガリアンな生き様

 秒速5センチメートル/きいろいゾウ/サイドシートに君がいた

小説・秒速5センチメートル (ダ・ヴィンチブックス)

小説・秒速5センチメートル (ダ・ヴィンチブックス)

★★★★★
あらすじ
第1話 「桜花抄」都内の中学に通う遠野貴樹の元に、転校してしまった初恋の相手である篠原明里からの手紙が届く。1995年の冬の終わり。明里との再会を果たすため、貴樹は次第に強くなる雪の中を明里の待つ岩舟駅へと向かう−。13歳のふたりの上に永遠と瞬間が交差し、ふりそそぐ。
第2話「コスモナウト」
1999年、高校3年の何もかもうまくいかない夏。種子島に暮らす澄田花苗は、東京から転校してきた貴樹に宿命的な片想いをしている。サーフィンで波に立てた日に貴樹に告白すること。密かな決意を胸に、花苗は必死に波に向かう−。
第3話「秒速5センチメートル
仕事を終えた深夜の帰宅路、貴樹は灯りの消えた高層ビルを見上げて思う。そんなに簡単に救いが降ってくるわけはないんだ、と−。東京での大学生活、就職してからの水野理紗との出会い、いくつかの喪失とささやかな再生。そしてまた、東京に桜の咲く季節が訪れる。(本書帯より)

レビュー
アニメーション映画を見て、映像はとても美しいんだけど何か釈然としないものが有って、それは第3話の内容がなかり端折ったもので、作者の言いたい事が良く汲み取れなかったからなんだけど、小説を読めばそこを補填する事が出来るんじゃないか、と思えたので読んでみました。
内容的にはほとんど映画と同じです。ただ、やはり3話の内容は少し詳しく描かれています。東京へ戻ってからの生活、幾度かの出会いと別れ、そういう事が有って、ラストの踏み切りのシーンへ繋がるという事。彼が、「たったひとりきりでいい、なぜ俺は、誰かを少しだけでも幸せに近づけることができなかったんだろう。」と悔やむ場面が有ります。彼は付き合ってきた彼女達と結局は別れる事になるのですが、それは彼だけに問題が有るわけではないにしろ、そこで彼はもっと何か出来る事、するべき事が有ったはずです。でも、出来なかった。過去を振り切って今を見据えるとか、振り切れないのなら何かしらのアクションを起こすとか、だけどそれは今だから言える事で、その時々ではそれで一杯一杯で、誰しもそういう失敗や後悔を積み重ねて生きてるんだという事。
小説としての完成度は満点とは言い難いかもしれません。だけど、「だからあの踏切で踵を返すシーンが有るんだ」という事が分かっただけで、僕は充分満足できました。あと、3話で少しだけ映画では描かれていない花苗のエピソード(別れの場面)が書かれていて、少し救われた気がしました。割と短い話だし、3話に分かれていて読みやすいので、映画を見ていない人にもお勧めですが、映画を見た後に読むとより一層楽しめると思います。
結局何だったんだ?という様な話ですが、読み終わった後に、見終わった後に、言い様の無い切なさが胸に残ります。

きいろいゾウ (小学館文庫)

きいろいゾウ (小学館文庫)

★★★★☆
あらすじ
夫の名は武辜歩、妻の名は妻利愛子。お互いを「ムコさん」「ツマ」と呼び合う都会の若夫婦が、田舎にやってきたところから物語りは始まる。背中に大きな鳥のタトゥーがある売れない小説家のムコは、周囲から生き物(犬、蜘蛛、鳥、花、木など)の声が聞こえてしまう過剰なエネルギーに溢れた明るいツマをやさしく見守っていた。
夏から始まった二人の話は、ゆっくりと進んでいくが、ある冬の日、ムコはツマを残して東京へと向かう。それは、背中の大きな鳥に纏わるある出来事に導かれてのものだった。(本書裏表紙より)

レビュー
おだやかで優しい旦那と、あどけない女房の話ですが、前半は穏やか過ぎて、なんじゃコリャ。ノロケ話なら他でやれ。と思えて少々イライラしたのですが(特に女房のあどけなさの演出が少々臭い。夫婦の掛け合いの上手さは「100回泣くこと」が秀逸だった。)、後半に向けての伏線でした。
僕は背中に刺青なんて無いけど、これは分かる気がする。優しい事が、相手の望む事を望むままにやる事が必ずしも愛であるとは限らないという事。なぜ問い掛ける事が出来ないのか。なぜ「行かないで。」の一言が言えないのか。本当に相手の事を思うなら、例え相手が悲しむ事でも嫌な思いをする事であっても、あえて本音を言うべきだという事。そして、それは本当に互いに揺るがない信頼関係を築いていなければ出来ない事で、夫婦とは本来そういうものだという事。
僕は、単に優しいだけの良い人にしかなれないけど。
★4つなのは、余計なエピソードを盛り込むよりも、出会いから結婚するまでのいきさつ等にもっとページを割いた方が良かったように思えるから。

サイドシートに君がいた (角川文庫)

サイドシートに君がいた (角川文庫)

★★★☆☆
あらすじ
ときに楽しく、ときに切なく、恋愛を引き立てるクルマたち。そんなクルマがきらりと存在感を漂わせる、恋愛諸説集。ロスの郊外で、思い出のフォルクスワーゲンを見つめながら、十代の失恋を、痛みとともに懐かしむ「あの頃、フォルクスワーゲン」、大きな体で、なぜか小さいクルマに乗っている青年との恋を描いた「コスモスが泣くかもしれない」など、ほろ苦さの中にも、愛おしさあふれる、大人のための5つの愛の物語。(本書裏表紙より)

レビュー
物語にさりげなく車が登場する素敵な話。 タイトルや解説を見ると車を大きく取り上げてる様に思えますが、実際は必然的に出てくる感じで、これだけ車が溢れかえってる今、車が関係しない話も無いので特に「車にこだわってる」という感じじゃありません。
話はどれも素敵ですが、ドラマみたいで素敵過ぎる感じがして感情移入してのめり込める内容ではないかも。ハーフじゃないし、マンハッタンも馴染みないし(笑)
内容が悪い訳じゃないです。何となく「わたせせいぞう」さんを彷彿させる感じ。