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目指すのはジャンガリアンな生き様

 山女日記 湊かなえ







山女日記

山女日記

このまま結婚していいのだろうかーーその答えを出すため、「妙高山」で初めての登山をする百貨店勤めの律子。一緒に登る同僚の由美は仲人である部長と不倫中だ。由美の言動が何もかも気に入らない律子は、つい彼女に厳しく当たってしまう。/医者の妻である姉から「利尻山」に誘われた希美。翻訳家の仕事がうまくいかず、親の脛をかじる希美は、雨の登山中、ずっと姉から見下されているという思いが拭えない。/「トンガリロ」トレッキングツアーに参加した帽子デザイナーの柚月。前にきたときは、吉田くんとの自由旅行だった。彼と結婚するつもりだったのに、どうして、今、私は一人なんだろうか……。
真面目に、正直に、懸命に生きてきた。私の人生はこんなはずではなかったのに……。誰にも言えない「思い」を抱え、一歩一歩、山を登る女たちは、やがて自分なりの小さな光を見いだしていく。女性の心理を丁寧に描き込み、共感と感動を呼ぶ連作長篇。

★★★★★






レビュー
7つの短編からなる小説。その1つ1つが登山に関係して、そこに登場する人物が後の短編に関ってくる。そういう手法は有川浩阪急電車でも見られたけど、湊かなえは人物の描写が繊細でリアリティが感じられて読んでいて面白い。とにかく個性の書き分けと心情の表現が上手く、つい読み耽ってしまってあっという間に読んでしまった。
全体的に面白かったんだけど、あえて選ぶなら「槍ヶ岳」と「白馬山」かな。どれも秀逸だったんだけど、槍ヶ岳は主人公の考え方が特に共感出来たのと、白馬山での姉妹とその娘のやり取りであったり心情であったりが涙腺ゆるゆる。
湊かなえって人間不信になりそうな嫌悪感を突きつけられるイメージ持ってたんだけど、この作品にかんしては終始穏やかで楽しめた。
山に登らない人でも楽しめると思うけど、登山やトレッキングをする人だとなお楽しめると思う。