シングル スマイル

目指すのはジャンガリアンな生き様

錦繍 / 宮本輝

 

錦繍 (新潮文庫)

錦繍 (新潮文庫)

 

 「前略 蔵王のダリア園から、ドッコ沼へ登るゴンドラ・リフトの中で、まさかあなたと再会するなんて、本当に想像すら出来ないことでした」運命的な事件ゆえ愛し合いながらも離婚した二人が、紅葉に染まる蔵王で十年の歳月を隔て再会した。そして、女は男に宛てて一通の手紙を書き綴る―。往復書簡が、それぞれの孤独を生きてきた男女の過去を埋め織りなす、愛と再生のロマン。

★★☆☆☆

 

 

 

20代から40代の男女に取材したら誰も熱烈な恋愛をしていなかったという記事を読んで、そこで今恋愛小説が売れないという事を初めて知った。

hon.bunshun.jp

へぇーそうなの?書店では恋愛モノの小説やコミック沢山売ってるよね?で、そこで恋愛小説の名作として挙げられていた小説がこれ。

訳有って離婚した夫婦が偶然再会し、そこから手紙を通してお互いの過去を解き明かしていく、という展開なんだけど、正直僕には全然響かなかった。設定が昭和も昭和という事も有るけど、それは大した問題じゃない。ただ、登場人物は「昭和の男性が思い描く理想的な女性像」という印象を色濃く受けるし、男性は男性で「誠実な人が思い浮かべるロクデナシ」という印象が強くて、読んでいてもフィクション感がぬぐえない。
解き明かされる過去というのも驚くべき事ではなく、どちらかといえば行き当たりバッタリな印象で、確信部分の「死」も何故死ななければならなかったのか、どうして殺さなければならなかったのか明確な理由が出てこない。いやだって人が死ぬんだよ?人を殺すんだよ?もっと明確で強い意志が無きゃ説得力無いでしょ。元夫婦が偶然出会ったいきさつに関しても必然性が感じられない。かといって熱烈な恋愛感情も描かれていない。驚きの展開を見せるのかと思って読み進めると、輪廻転生であるとか、人の業であるとか、思いもよらぬ方向へ展開していって、違う意味で驚きだった。手紙のやり取りという手法は面白いと思うものの、手紙にしてはくどくて長過ぎるのと、途中で登場人物の会話を挟んだりして、いやこれ手紙じゃないよね。単なる文章だよね。って興覚めしてしまう。
これほんとに名作なのかなぁ。僕の感性がおかしいのかなぁ。

 

さて、先の記事に登場するもう1冊の「四月になれば彼女は」の方も驚きの展開に!?

もう嫌だ。