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目指すのはジャンガリアンな生き様

初恋と不倫 坂元裕二

 

 

 

往復書簡 初恋と不倫

往復書簡 初恋と不倫

 

不帰の初恋、海老名SA

初恋の人からふいに届いた手紙。時を同じくして目にしたニュースでは、彼女の婚約者が運転する高速バスが横転事故を起こし、運転手は逃走中だと報じている――。
カラシニコフ不倫海峡

アフリカへ地雷除去のボランティアに行くと言い残し突然旅立った妻が、武装集団に襲われ、命を落とした。一年後、後を追おうとしていた健一のもとに、一通のメールが届く。〝あなたの妻は生きていて、アフリカで私の夫と暮らしている〞同じ喪失を抱えた2つの心は、徐々に近づいていき――。
メールや手紙、二人の男女が綴るやりとりのみで構成された、息を飲む緻密なストーリー展開。生々しい感触と息遣いまで感じられる、見事な台詞術。「台詞の魔術師」 坂元裕二がおくる、忘れえぬ恋愛物語。

★★★☆☆

 

 レビュー

2編の独立した小説。前半の「初恋」に関わる小説と後半の「不倫」に関わる小説で、タイトルはインパクトが有るものの内容的にはタイトルほど強烈なインパクトは無かった。

「往復書簡」と銘打たれている様に、手紙もしくはメールでのやり取りをそのまま小説化しているのでテンポは良い。二転三転していく展開は裏をかかれて面白くもあるけど、少々飛躍し過ぎていて現実味に欠けて感情移入しにくい。良くも悪くもドラマ的で、微妙な心情の機微うんぬんという文章構成ではない。

それでも「不帰の初恋、海老名SA」は良い意味で裏切られて読後感は悪くなかった。「カラシニコフ不倫海峡」は不倫を扱うにはドロドロに欠けて現実味に乏しい反面、純潔にまとめられている訳でもなく中途半端な印象。

読みやすくはあるけど、その分印象も薄かった。