シングル スマイル

目指すのはジャンガリアンな生き様

コンビニ人間 村田沙耶香

 

コンビニ人間 (文春文庫)

コンビニ人間 (文春文庫)

 

 「いらっしゃいませー!」お客様がたてる音に負けじと、私は叫ぶ。古倉恵子、コンビニバイト歴18年。彼氏なしの36歳。日々コンビニ食を食べ、夢の中でもレジを打ち、「店員」でいるときのみ世界の歯車になれる。ある日婚活目的の新入り男性・白羽がやってきて・・・。

★★★★☆

 

 

レビュー

今更だけど、芥川賞受賞作品で読みたかった作品。もはやkindleって何?状態。

あらすじを読む限りでは軽妙な印象を受けるけど、もっと切実な生き辛さを上手く書き表している。社会の常識から少しでも外れてしまう事が、どれだけ面倒な事なのか。

ADHDASDの兆候が見られるんじゃないか?とも思える主人公だけど、ここまでではなくとも何となく空気が読めなくて生活し辛いという人は潜在的に多いんじゃないかと思う。白羽が言う持論も自己擁護ではあるけど、でもそれだけではない様な。僕自身、周りの顔色を伺いながら迷彩服で周りに溶け込み、地雷を踏まない様に注意して生きている。

現代社会の常識、倫理観、道徳観というのはここ数年から数十年程度のもので、そういうものは時代に寄って移り変わっていくものだし、立場や視点が変われば180℃変わってしまうとても不確定なものなのに、どういう訳か皆自分の考えが正しいと思いがちだ。意にそぐわない言動をする人に対して、例え迷惑や実害を被っていなくても「非常識な人」「空気が読めない人」と一蹴する。短くて読みやすいけど、そういう人間の本質的な所や社会の違和感を上手く描いている。

先に地球星人を読んでしまったので、途中どういう着地点に持って行くのか不安になったけど、読後感は割と良かった。