シングル スマイル

目指すのはジャンガリアンな生き様

キック始動はアドベンチャー

 

 

今年に入ってから散々XR600Rの点火系トラブルを修理してきたんだけど、修理するにあたり色々調べた時に、XRが何故「キック始動」なのかが何となく分かった気がする。僕は今まで単純に軽量化の為だと思っていた。

今時キック始動のバイクなどほとんど見かけない。キックと聞いて思い浮かべられるのはヤマハSRくらいじゃないかと思う。SRがキック始動である理由は性能や機能性の為では無く、単に「儀式」としての意味合いでしかない。バッテリーを積載しているし、今時の技術であれば小型軽量のセルモーターを搭載する事など造作も無い。キックでエンジンを掛けたいから、キック始動なんだ。キックでエンジンを掛けなければいけない切実な要因は無い。

XR600Rは1980年代のマシンなのと、元々が海外向けコンペマシン(公道走行不可)なのでキック始動なのは当たり前だと思っていた。当時の公道用市販車であるXLR250Rもキック始動だったし、軽量化が必須な本格的オフロードバイクは当時は全てキック始動だった。バッテリーとセルモーターで重量が嵩むのと、4stエンジンの場合は単気筒エンジンを始動させる為にデコンプの機能を追加する必要が有り機械的にも煩雑になるからだ。

ただ、XRの電気回路図を見ながら、これは単なる軽量化の為だけではないんじゃないかと思った。当然軽量化が最たる理由ではあるけど、実はもう1つ、必ず戻る(ゴールする)為なんじゃないかと。というのも、極めて単純な回路になっているからだ。ライト等の灯火器類とは完全に別回路になっていて、スパークプラグに点火させるだけの回路構成になっている。だから灯火器の回路に何らかのトラブルが有っても、エンジンは掛かる。使用される電子部品はCDIしかない。点火に必要な発電する為のコイルと、点火タイミングを決めるパルゼネも有るけど、どちらも単純な磁石とコイルでしかない。時々熱で故障する事もあるけど、頻繁に故障する様な物でも無い。CDIさえ壊れていなければ、そしてキックさえ蹴る事が出来れば、何処であろうとどんな状況であろうとエンジンを始動させる事が出来る。ラリーレイドの様に人気の無い荒野を数百km走り続ける様なシチュエーションだとか、アドベンチャー的なロングライドでは心強い。実は本当にアドベンチャーする為の機能だったのかもしれない。

とはいえ、今時のピュアなオフロードバイク(海外製エンデューロマシン)はセル始動だし、最も軽量化が求められるモトクロッサーですらセル始動になってる。そりゃ足場の悪い所キックしてエンジン掛けられない位なら、セル1発で再スタート出来た方が遥かに優位だ。

それでも、XRはアドベンチャーなんだと思う。BMW-GSとか、アフリカツインとかそういうアドベンチャーモデルよりも、明確にピュアにアドベンチャーなんだと思う。