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三菱パジェロミニ(H58A) スペックとインプレッション

 

 

 

先日納車されたばかりでもう少し走り込んでから記事を書くつもりだったけど、慣れてしまうと最初のインパクトや印象が変わってしまいそうなので忘れないうちに気付いた事を書き残しておく。その他今後気付いた事は追記していく。

購入の経緯はこちら

 

何年前の車だよ、既に生産中止じゃねーか、っていう今更ながらの車なんだけど、ロングセラーだったので中古車市場にはかなり流通しているのと、昨今はSUVブームという事もあって需要はそこそこ有るんじゃないかと思う。僕の車に対する嗜好は快適性とか利便性、高級感よりも極力簡素な物を好むので世間一般的な評価とはかなりズレている上に、何と比較して評価するのか、何を重視して評価するのかで結果は全く違うものになる。それらを踏まえ、素人でかなり主観的な意見だという事は了承頂きたい。

 

 

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【スペック】

三菱 パジェロミニ 1999年式 グレードX

車両型式 GF-H58A

全長・全幅・全高 3395×1475×1635

ホイールベース 2280mm  トレッド 1270mm

車両重量 910kg

エンジン型式 4A30

直列4気筒SOHC16バルブ 過給機無し 659cc

ボア×ストローク 60.0×58.3mm  圧縮比 10.2

最高出力 52ps(37kw)/6500rpm

最大トルク 6.3kg・m(62N・m)/4500rpm

燃料タンク 43リットル

Fサスペンション マクファーソンストラット コイルスプリング

Rサスペンション 5リンク式コイルスプリング

Fブレーキ ベンチレーテッドディスク

Rブレーキ ドラム

タイヤ(前後) 175/80R15

最小回転半径 4.8m

変速比前進 3.882/2.363/1.525/1.000/0.852

変速比後退 4.270

最終減速比 6.571

燃費 カタログ値:16.2~16.4km/L 実測:12km/L台~15km/L(普段13~14km/L)

 

【各部詳細】

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フルモデルチェンジ後すぐのモデル(2代目前期型)。初期型(ヘッドライトが丸いモデル)は旧軽自動車規格なので車体が一回り小さい。1998年にフルモデルチェンジして車体寸法が一回り大きくなる。2005年にマイナーチェンジでテールランプ周りが変更、2008年にマイナーチェンジしてパジェロ的な外観とインテリアのモダン化、減速比の変更等が行われている。舗装路での快適性を優先させたいなら、減速比がハイギヤード化された2008年以降のモデルが良さそう。逆に未舗装路を優先させたいなら2008年以前が良い。

Wikipediaによると、トランスミッションと駆動系は商用車のミニキャブを流用しているらしい。確かに減速比も酷似してる。要はミニキャブの駆動系にSUVのボディを載せただけとも言えなくもない。専用設計ではないとニワカとかナンチャッテとか言われそうだけど、専用設計だとコストが跳ね上がるし、流用であれば補修部品も長期に安定して供給されるだろうから長く所有するには都合がいい。商用車ベースだから耐久性も問題ないだろう。手持ちの部材を使って上手く造ってると思うし、想定される用途に合わせて最適化されている。(と思ったらミッションのベアリング壊れた

 

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シンプルな外観。外観だけでなく装備もシンプル(貧相)で、Xグレードはキーレスエントリーやドアミラーの電動調整、電動格納ドアミラーが無く、ホイールも鉄。林道で張り出した枝にバシバシぶつけたりするから簡素な分故障しにくくて良いし、壊しても修理代は安価に済む。窓は一応パワーウィンドウ。むしろ窓も手動のクルクルでも良かった。ドアミラーは大振りで形状も良く、視認性は良好。サイドアンダーミラーも飾りでは無く実用的なレベルで見えるので、結構真面目に造られている印象。

 

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既に20年前の車で四角いシンプルな外見は今時見掛けないけど、クロカン四駆っぽくて逆に新鮮。フィアット・パンダラーダ・ニーヴァを彷彿させなくもない。どちらも面白そうな車で乗ってみたいとは思うものの、両車に比べると故障しにくい、部品が安価ですぐ手に入る、どこの車屋でも整備出来るという点はメリットではある。

フロントオーバーハングもリヤオーバーハングも切り詰められていて悪路走破性も高い。

 

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パンパーがボディと同色じゃないけど、四駆の場合は無骨な印象で逆に都合が良い。車両重量は910kgと、軽自動車にしては重い。その代わりガッチリとした車体剛性。実際当時は軽自動車では最高の安全性能だった様。ただ、ドアは非常に軽々しいので側面から衝突されたら潰れるかもしれない。

 

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リヤウインドウはハメ殺しで開かない。運転席、助手席には大型のドアバイザーが付く。雨の日でもかなり大きく窓を開けられるので、エアコンを掛けるとがっつりパワーダウンするこの車には非常に有難いアイテム。ガソリンは右。タイヤは175/80R15。16インチのジムニーと比べると一回り小さい。悪路走破性に全振りではなく舗装路も含めてバランスを取った結果だと思うけど、サイズが特殊でタイヤ銘柄の選択範囲は狭い。

 

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エンジンは可変バルブタイミング等の機能を持たないオーソドックスなSOHC直列4気筒を縦置きで搭載する。ターボとNA(ターボ無し)が有るけど、これはNA。軽自動車のエンジンで4気筒というとプレミアム感が有る反面、縦置きなら全長が短い3気筒の方が良いんじゃないかとか、4気筒だと低速トルクが細ってダートでは扱いにくくなりそうでこの車には不向きな印象を受けるけど、メーカーの意図は分からない。

NAエンジンだと、この車格に対してはかなり非力。実燃費は通勤や街乗りで12~13km/L程度、ロングドライブで14km/L台くらい。車体が重い上に高回転を多用する割には良くて、航続距離は500km位走る事が出来る。

 

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オイル給油口から覗くとローラーロッカーアームが見える。シリンダーブロックは鋳鉄製だし、結構耐久性高いエンジンなのかもしれない。良く言えばオーソドックス、悪く言えば古臭い。何の変哲もないエンジンだけど複雑な構造が無い分トラブルが発生し難いのでクロカン四駆には向いている様に思えるけど、以前乗っていた三菱アイのエンジン(MIVEC/可変バルブタイミング)も全然壊れなかったので国産車なら余計な心配かもしれない。

SOHCだけどトップエンド(7千回転)までスムーズに回る。前オーナーのオイル管理も良かったのか、スラッジや酷い焼けは見られない。シンプルなエンジンだけどギヤ比の都合上どうしても高回転を多用するので、オイル交換はマメにした方が良さそうだ。

 

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吸気口は左ヘッドライト上。実際には波や水しぶきが有るのでもっと低位置だけど、理論上はここまで水没しても走れるのか? ボンネットフードで隠れて露出しないので水は入り難いとは思う。電装品や駆動系も水没してしまうので、あんまり水の中に入らない方が良いとは思う。

 

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フロントにはスキッドプレートが備わる。鋼板製だけどとても薄いので、取付取り外しが楽な反面、簡単に変形する。前後の牽引フックもゴツめの物がメインフレーム両側にガッチリ固定されてる。最低地上高は195mm。

 

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エンジンオイルの交換はスキッドプレートを外さないといけない。外すと足回りが良く見える。巷ではボロクソに言われているフロントのストラットサスだけど、それほど華奢な構造ではなく一般的な使い方では問題はない。

 

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フロントのストラットサスを後方から。駆動構造はパートタイム4駆で、センターデフを持たない構造(前輪と後輪の駆動は直結)。走破性が高くなる半面、グリップの良い路面だとコーナーリング時に前後輪の回転差を吸収出来ず、駆動部やタイヤに負担が掛かる。滑りやすい路面以外は4駆にしない方が良い。

 

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ジムニーと比べると確かに貧弱そうに見えるけど、ジムニーが異常なの。フロントのディスクブレーキは一応ベンチレーテッド。

 

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リヤは5リンクリジッドアクスル。前後輪共にデフロック、LSDの設定は無い。探せば社外品は有る。

 

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5リンクはこんな感じ。上下動を制限するリンクアームが左右に各2本、横方向の制限をするリンクが後部に1本。ジムニーのリンクアームと比べると随分と華奢に見えるけど、その分軽くで舗装路での追従性は良さそう。

 

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これもボロクソに言われているモノコックボディ。ただのモノコックではなく、ラダー状の補強を追加しているビルドインモノコックボディ。酷評されているけど、一般的なユーザーでラダーフレームが必須の人はほとんど居ないだろう。ビルドインラダーの中央付近にも更にブレース(補強の横渡しフレーム)が入っている。所々薄っすら錆が浮いているのでこの後錆止めで塗装しておいた。

 

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ルーフに段が有る。デザインなのかな?と思ったら

 

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室内天井の内貼りにも段が有る。ロールバー形状に補強が入っているのか?

 

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インパネ周りはさすがの古さを感じさせるものの、シンプルで視認性は良く必要にして充分な機能。スイッチ類のデザインは素っ気ないけど、操作感はかなり良い。空調の調整ダイヤルも操作しやすい。水温計が有るのが好印象。オフロード走行する場合、極低速でエンジンを回したりするのでオーバーヒートしないのか心配だったんだけど、ちゃんと水温計ついてた。マイナーチェンジ後はインパネ周りはもっとモダン化しているけど、クロカン四駆ならこれ位素っ気なくても良いと思う。

ペダルレイアウトが若干右にオフセットしている感じがしたけど、他のレビューではその辺りは触れられていないので気のせいかもしれない。慣れの範疇か。クラッチペダルは軽く、ストロークは深め。狭い軽自動車だけどクラッチペダルの左にちゃんとフットレストが有る。

シートは軽自動車にしてはやや大柄で成人男性の僕が乗っても窮屈さは無いし、座り心地も良く意外にしっかりしてる。クロカン四駆だけあって助手席側にグラブバーが装備されている。けど、助手席側にエアバッグが無い。オプションなのか?

 

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5MTのシフトレバーと、四駆切替のトランスファー操作レバー。シフトフィールはグニャグニャはしていないけどゴリッと入り難い時が有るのと、ストロークが長いので素早い変速はしにくい。商用車ベースの四駆のMTだからこんなものだろうけど、ワインディングで気持ち良くコクコク変速出来る様な物じゃない。減速比は1速がかなり低くて完全なオフロードや急坂の坂道発進以外では使えない。街乗りでは2速発進で丁度良く実情は4MTでその上5速は伸びず、軽トラに良く似た変速比。

 

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僕がドライビングポジションを決めた時のリヤシートの状態。かろうじて座れる。後部座席にもちゃんとドリンクホルダーが装備されていて、何とか快適性を確保しようとしているのがうかがえる。リヤサイドにスピーカー取付部が有るけど、スピーカーレスではなくてちゃんとスピーカーが付いていて音が出た。

 

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リヤシート全景。一応リクライニングするし、短時間なら大人でも我慢出来るレベル。ただし今時のスーパーハイトワゴンなどとは比べるべくもない。左右分割シートなので、片側だけ倒す事も可能。

 

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リヤハッチは横開き。跳ね上げ式ではないので雨天時に屋根替わりには出来な代わりに、ダンパーがヘタってドアハッチが落ちてくる心配は無い。スペアタイヤがリヤハッチに付いているので重量的に横開きにせざるを得ないんだろう。

リヤシートに人が座れる程度リクライニングさせると、ラゲッジはこの程度。4人乗っても多少なら荷物は積める。ボンネット形状の軽自動車にしては頑張っていると言える。ラゲッジのフロア下に若干の小物入れスペースが有り、更にその下にジャッキが収まっている。車高が高いので、ジャッキはパンタジャッキにかさ上げした独特の物。

 

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 リヤシートを倒すとフラットなラゲッジになる。助手席も倒せは、1人なら車中泊も出来そう。このモデルはリヤシートのヘッドレストが可倒式になっていて、ヘッドレストを取り外さなくてもフラットに出来る。結構機能的。

 

 

 

【1stインプレッション】

パジェロミニがどんな車なのか、どんなドライブフィールなのか気になる人なら、これらの記事は目を通しているかもしれない。

221616.com

autoc-one.jp

www.webcg.net

どの記事もでも、おおむねパジェロミニはオフロード性能ではジムニーに今一歩だけど、オンロード性能は良い、という評価だ。そんなパジェロミニに対する僕の印象は、

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんじゃコレ!? トラックかよ!?」

 

 

だった。理由は下記の3点。

 

1)加速が悪い

車体が重い。エンジンパワーが無い。減速比が低速寄りで速度が伸びない。まぁ、クロカン四駆で、しかも軽自動車なんだから仕方が無いよね。そういう事を充分理解して割り切れれば良いけど、普通乗用車の様に市街地や高速道路を快適に走れると思ったら大間違いだ。ターボエンジンと4速ATなら多少は快適になるかもしれないけど、車体の構造が変わる訳では無いのでどうしたって一般的な乗用車とは違うと思う。どういう評価基準なら街乗りも快適などと言えるのか。

2)うるさい

四駆構造、オフロードも走れるタイヤ、市街地走行でも回さないと走らないエンジン等、メカノイズやロードノイズは著しい。市街地でもラジオ聞こえんがな。頑張って走ってる感はハンパ無い。

3)乗り心地が悪い

サスペンションストロークは有るけど、ちょっとしたギャップでよく跳ねる。ショックの吸収性も悪く、路面状況が悪いとバタバタする。バネ下荷重が重い車特有のフィール。これも本格的な四駆だから、と理解していれば良いけど、フィーリングはまんまトラック(貨物車両)だ。

 

おかしいな?僕の評価が渋過ぎるのか?と思ったんだけど、今まで乗ってたのが三菱アイで、これも随分と古く今時の軽自動車と比べても見劣りする走行性能のはず。そのアイと比べても「トラックかよ!」って突っ込みたくなるほどの走行フィールで笑ってしまう。

舗装路での走行フィールは酷いものだけど、だからダメな車だとは思っていない。むしろ面白い。そういう事を目的とした車では無いからだ。乗り込んで走り出した瞬間に、これは(この当時の)軽自動車のレベルではないとハッキリ分かる程の剛性感と重厚さで、道具感が凄い。快適で便利な車ばかりが売れる世の中で、これだけ(街乗りでは)使えない車を作って売っていたのは凄い事だと思う。パジェロミニは所詮ジムニーの二番煎じかもしれない。でもお茶を濁す訳ではなく本当にパジェロを標榜して作ってたんだ。常々、今の技術で三菱ジープを作ってくれれば良いのに、と思っていた。パジェロミニは、三菱の新しいジープじゃないかと思った。そう言うとジープとは構造が違うとか色々意見が有りそうだけど、オフロードでの機能を重視し、最低限の快適性を確保した車両を今作ったらこうなりました、という物なんじゃないか。本家パジェロでは大き過ぎるし豪華過ぎる。ジープならパジェロJrか、パジェロミニだろう。

僕は軽トラックとかダブルキャブトラックが欲しいなどと思っている変な人だからパジェロミニの走行フィールも笑って面白いと言えるんだけど、オフロードや雪道はほとんど走らないという人には不向きな車だと思う。だけど、街中でもパジェロミニは良く見掛けるし、室内の広さと快適性、利便性を追求した車ばかりがもてはやされる昨今、こんな不便で不快な車でも良いと思っているユーザーがそこそこ居るのはちょっと嬉しい。

※追記

上記サイトのインプレッションは全てマイナーチェンジ後のモデル(2008年以降の2代目後期型)だった。マイナーチェンジの際に減速比が変更されており、より高速寄りに変更されている様。その為、マイナーチェンジ前後では評価が異なると思う。

 

ジムニーとの比較】

何かにつけジムニーと比較されるパジェロミニ。それに対する個人的な見解。

〇メリット
・車両価格が安い
パジェロミニはすでに販売終了しているので手に入れるなら中古になる。同じ程度の中古車で比べた場合、ジムニーの2/3~半分程度の金額になる。

・NAエンジンが選べる
ジムニーは全てターボエンジンになる。対してパジェロミニにはターボエンジンとNAエンジン(ターボ無し)がラインナップされていた。ネット上ではターボエンジンを推奨されているけれど、あえてNAエンジンを選択するという手もある。
NAエンジンのメリットとして、ターボに比べて若干燃費が良いという点が有るけれど、燃費は走行状況や運転の仕方で変わるので大きなメリットにはならない。一番のメリットは、ターボに関する故障が無いという点。最近のターボは故障しにくくなったものの、距離を走っていたりエンジンオイルの管理が悪かったりすると割と故障する。クロカン4駆は僻地で故障しない為に高い信頼性を保つ必要があり、機関部分は極力シンプルな方が良い。また、ターボエンジンは人気が有る為、NAエンジンは値引き交渉の材料に使える。ただ、この頃のエンジンは回転数を上げてパワーを出す性格の物なので、しっかりアクセルを踏んで上まできっちり回さないと走らない。トルクが無いので高回転までしっかり回さないと変速の度に失速するからNAエンジンはATとの相性が非常に悪いし、オフロード向きなエンジンとも思えない。実際に運転してみないと実感出来ないので、後悔しない様に購入前の試乗は必須。

〇デメリット
・改造パーツが無い
ジムニーはアフターマーケットのパーツが豊富に有る。オフロードでの走破性を上げるのも、舗装路での快適性を上げるのも、格好よくドレスアップするのも、思いのままだ。なので、標準状態からカスタマイズしたいならジムニーの方が良い。カスタマイズするつもりがなくノーマル状態で乗り続けるなら、どちらでも良い。

・歴史が無い

ジムニーはモデル周期も長く、継続して生産販売してきている。そのノウハウは歴史と言っても良く、新たしいモデルに引き継がれている。パジェロは残念ながらパジェロミニ以外も全て途絶えてしまった。

 

ジムニーと比べてオフロードでの走破性が低い、という事がデメリットの様に言われているけど、必ずしもそうではない。と言うのも、両車のオフロード走行性能は、オフロードコースとか廃道の更に奥に突っ込むとか、もはや「道ではない」所にならないと大きな差は出ないからだ。そういう所を想定している人は最初からジムニー一択なので迷わない。それ以外の場合(除雪してある積雪路とか一般的な未舗装林道レベルを想定している)なら、どっちでも良い。走行不能になる程の超過酷な状況はドライバーが故意に行かなければ遭遇しないので、そんな状況を望まなければ避けられるからだ。舗装路での走行フィールも、パジェロミニだから特別良いとも思えない。
ジムニーラダーフレームを採用しているとか前後リジッドアクスルを採用しているとか、そういう車体の構造的な点がメリットであるかの様に言われているけれど、それらは先の通り「道ではない」様な状況になって初めて効果が発揮される。必要としないけど構造として魅力的だと思うのは良いかもしれないけど、超過酷なオフロードでのメリットは一般的な道路を走行する場合にデメリットになる、という事は留意しておくべき。

ちなみにラダーフレームのメリットについては下記サイトが参考になる。記事の内容ではなく、コメントの内容の方が(笑)。ほとんどのユーザーには不要な構造だと思う。

barbarossa.red

 

リジッドアクスルについての解説は下記記事が分かりやすい。ジムニーがリジッドアクスルに固執するのは、悪路走破性の向上と簡素で堅牢な構造だからだろう。反面、舗装路での高速走行や乗り心地に関しては劣る。極少数の限られた車種でしか使われていない構造だから、デメリットもまた大きいのは当然だ。

car.motor-fan.jp

car.motor-fan.jp

 

もう1つ、最近のモノコックボディの剛性について。下記記事の末端付近の画像を見ると、最近の軽自動車のモノコックボディがいかに高剛性か分かる。ビルドインモノコックでもなく、ワゴンRがベースの格好だけのオフロードと揶揄されるボディなのに。昔と違って使用される鋼材の性能や製法が飛躍的に向上しているので、ラダーだからだとかモノコックだからだとか、そういう構造だけで判断しない方が良い。なるべく新しいシャシーとエンジンの方が良いというのが良く分かる。

www.4x4magazine.co.jp

 

 

【シチュエーション毎のインプレ】

〇市街地走行

★★☆☆☆

メリット

コンパクトな車体で取り回しが楽。ドライバーの視点が高く視認性良好。四角いボディで車両端が把握しやすい。

デメリット

車体が重く加速が悪い。ギヤ比が低速向きでエンジン回転数が高めになる。うるさい。バタつく足回り。

インプレ

車体は小さく、見切りが良く、視点も高く、運転はしやすい。大人2人なら充分な広さ。短距離(非常用的)ならなんとか4人でもいける。3人までなら割といける。

反面、一番苦手なのがゼロ発進(完全に停止した状態からの加速)。市街地走行では信号待ちや渋滞で頻繁に遭遇するシチュエーション。周囲の流れに乗って加速する場合でも4千回転辺りまで回す必要が有る。これは普通の軽自動車でもスタートダッシュに近い回転数。巡行状態でもエンジン回転数が高くなるのと四駆の駆動部が有るのでメカノイズがやたらうるさい。タイヤのロードノイズもかなりうるさいけど、これは新品の舗装路向けタイヤを使えば改善されると思う。バネ下荷重が重く、ギャップを通過する際にバタつく。最も快適と思える速度域が60km/h前後(5速3000rpm前後)というのは非常に平和的ではある。

ターボエンジンで4速ATなら煩雑な操作からある程度は解放されるかもしれないが、利便性を優先させるなら普通の乗用軽自動車の方が遥かに快適で便利で経済的だ。ただ、快適ではないものの、実際に市街地を頻繁に走って見ると意外にストレスは感じない。静寂性と安定性が高く巡行時のエンジン回転数が低い最近の車だと、速度が乗らない市街地走行では逆にストレスになるからだ。また、市街地の発進ですら高回転まで回せるのでMTを駆使している感は凄くて面白い。とても快適とは言えないが、移動手段やツールとしてではなく、運転そのものが好きという人には向いているかもしれない。

 

〇ワインディング

★★☆☆☆

メリット

しっかりとした車体剛性。良く回るエンジン。良く効くブレーキ。

デメリット

車体が重く加速が悪い。エンジンパワー(トルク)が無く失速する。重心が高い。バタつく足回り。

インプレ

回せばそこそこ走るものの、トルクが細過ぎて急な上り坂が続くと失速する(NAエンジンの場合)。車体に対してパワーが完全に負けている。5速MTだけど1速は低過ぎるので実質4速MTに等しく、また3速と4速が離れているので3速では吹け切ってしまうが4速では失速するシチュエーションが頻発する。日本の狭い峠でよく使う速度域で走ろうとすると3速で頭打ちになるか4速で失速するかの縛りを受けて、スムーズに走らせるのは難しい。ワインディングを快適に走りたいならターボエンジンにした方が良い。

パワーが無いなら下りでは良いのか?と言えばそうでもなく、5速でもギヤ比が低くてエンジンブレーキが強く掛かるので、速度を乗せてスムーズに走らせるにはやっぱり高回転まで回さなければいけない。6~7千回転までキッチリ回せばそこそこは走るけど、上りも下りも絶対的な速度は速くない。

外観からサスペンションはフニャフニャかと思ったら意外に粘って、コーナーリングは簡単には破綻しないし恐怖感も無い。ただ、バネ下荷重が重いのでギャップでの追従性が悪くて荒れた路面状況だと跳ねるので限界は高くない。以前「リヤ荷重が抜けるので、軽量化の為に背面スペアタイヤを外すのはやめた方が良い」と書いてあるのを見掛けて、そんなにシビアなん?wと笑っていたら本当に抜ける。下りのコーナーや滑りやすい濡れた路面等は丁寧に扱わないとリヤが流れてしまう。ABSもESC(横滑り防止装置)も無いし、ホイールベースも短めなのでスタビリティも低くて無理すると回ってしまう。

市街地同様パジェロミニのネックは車体の重さと加速の悪さで、加減速が激しいタイトコーナーが連続する場面や傾斜がキツいコーナーでは著しく失速してなかなか加速しない。車体の重さと舗装路向きではない足回り、非力なエンジンと、客観的な評価はどうしたって低い。MCC smartと比べても自分の動画で比較するとコーナー毎に差が開くのが分かる(パジェロミニが遅れる)。加速が鈍いのでコーナーの立ち上がりで差が出てしまう。日産マーチ(AK12)と比べるともっと顕著になるし、アルトworksの様な少々元気の良い車だと相手にもならないだろう。かといって面白くない訳では無い。元々ワインディングを速く走れる様な構造ではないんだけど、しっかりとしたシャシーと意外に踏ん張るサスペンションのお陰でワインディングでも楽しい。どう足掻いても速く走れないので、そもそも速く走ろうと思えない、前走車を追い越す気にならない、というのは平和的である意味利点かもしれない。

 

〇ダート

★★★★☆

メリット

コンパクトな車体。副変速機を持つ本格的な四駆構造。

デメリット

タイヤ径が小さくオフロード寄りのタイヤの選択肢が狭い。デフロックやLSD等の走破性を高める機構が無く、改造用の社外品も乏しい。

インプレ

林道にしろ積雪路にしろオフロードコースにしろ、軽量でコンパクトなのは有利。軽自動車にしては重たい車体も普通車のクロカン四駆に比べれば物凄く軽いし、車体が小さい分ライン取りに自由が利き、転回もしやすい。前進するのもギリギリの所を、バックで戻るなんて事はデカい車ではやりたくない。2WD、4WD以外に低速4WDが使える副変速機が有るのと、1速とバックがかなり低速の減速比になっている。2駆の1速の時3000rpmで12km/h位。低速4駆の1速の時3000rpmで5km/h位。半クラッチを使わなくても這う様な極低速で走行出来るので荒れ地や雪道では扱いやすい。

反面、標準のタイヤサイズではクロカン四駆にしては小径で走破性は低め、タイヤ銘柄の選択肢もかなり限られる。LSDもデフロックも設定が無く、ダートでの走破性は高望み出来ない。高回転型のエンジンキラクターも、オフロードには不似合いだ。それでも、僕が進むのを躊躇う様な路面状況でも問題無く走れるので、常識的な範囲で使う限りは困る事は無いと思う。未舗装の林道程度なら4駆にしなくてもかなり走る。動画を見てもパジェロミニがスタックしているのは「道」ではない所くらいだ。

ただし積雪路等の極度に滑りやすい路面では過信出来ない。もちろんFFやFRに比べたら走破性も高く安定しているけど、LSDもデフロックも持たない駆動構造なので、いくら四駆でも前輪の片方+後輪の片方がスリップするとスタックする。なので極度に滑りやすい路面だと車高の高さを生かす前にスタックする場合がある(実体験)。

サンプル(ハンターカブと同じ林道

youtu.be

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画像は2022年2月5日の関ヶ原。スノープラットフォーム(スタッドレスとしての使用限界ライン)が出た古いスタッドレスタイヤでも、除雪された道路なら豪雪でも難なく走れる。自宅のFF車はスタックした。とはいえ、いくら四駆でも雪道はスタッドレスタイヤでなければ走れないし、過信も出来ない。

 

 

〇高速道路

★★☆☆☆

メリット

無し

デメリット

車体が重く加速が悪い。ギヤ比が低速向きでエンジン回転数が高めになる。うるさい。バタつく足回り。

インプレ

5速で100km/h時にエンジン回転数は5400rpm位。6000rpmで110km/h強。レッドゾーンが7000rpmからなので、普通に高速道路を走るだけでほぼ吹け切ってしまう。直進安定性は高くなく、足回りも舗装路を高速で走る様には出来ていないのでコーナーでギャップに乗るとボヨヨーンと飛んで行く。

ただ、SOHCの4気筒エンジンは官能的とは言えないけど高回転でも比較的スムーズに回る。市街地やワインディングの様に急激な加減速が無い分、速く走ろうと思わなければ意外に走りやすい。エアコンを掛けるとかなりパワーダウンするので、上り坂が続くと登坂車線を使いたくなる。パワーダウンを避けて極力エアコンは使わず窓を開けて運転しているけど、高速で窓を開けると非常にうるさいので一人の時しか開けられない。

安い軽自動車にしてはシートの出来も悪くないので、数百km位なら充分走れる。トップスピードは平坦路で130km/h程度。アクセル全開でもスピードリミッターもレブリミッターも働かず、回転数は6500rpm位なので機械的限界。限界なので一時的ならともかく、130km/hで巡行するのはやめておいた方が良さそうだ。ターボエンジンならもっと出るだろうけど、いずれにせよ高速走行向きではない。

パジェロミニに限らず、パワーの無い車で高速道路を走るのは難しい。スムーズに走るには先を読んで運転しなければならず、また周囲の(運転がヘタな)車にペースを阻害されるので苦労するからだ。快適に走れるか、他の車と比較してどうかというと評価はせいぜい★2つ程度だけど、速く走ろうと思わなければそれほど苦にならない。オービスやパトカーに怯える必要が無いのは利点かもしれない。

サンプル

youtu.be

 

【感想】

パジェロミニ一押しで積極的に選んだ訳では無く消去法で残ったから購入したので期待値は低めだった。いくらMTでもクソ重たい車体では運転が楽しめるとはとても思えないからだ。だけど、実際に運転してみて「コレは良い。むしろコレが良い。」と思った。

というのも、一般的なクロカン四駆はどれもデカ過ぎて重過ぎるからだ。以前ダットサントラックのダブルキャブに乗っていた事があるけれど、5ナンバーサイズ(トラックなので実際は4ナンバー)でも大きくて重く、鈍重なフィールだった。砂漠や荒野、密林のジャングルとかならともかく、日本の市街地で乗ると凄くムダに感じたし楽しくも無かった。だから僕は、クロカン四駆なら三菱ジープ位がベストだと思っていたけれど、流石に古過ぎるし屋根もエアコンも無い車を足に使う程の筋金入りのマニアでもない。屋根があってエアコンが効く極めてシンプルなクロカン四駆といえばラーダ・ニーヴァが良いなとは思うけど、結構高額なのとロシア製自動車を維持する自信がない。

そんな所にパジェロミニ。軽自動車のくせに車体や機関部は手を抜いていないし、「こんな物は要らないのに」という過剰な装備が何も無くて清々しい。正にクロカン四駆ならコレだろうと思った。今ではもうここまでシンプルな車は販売されないだろう。更に、クロカン四駆なので車体がかなりしっかりしている。だから古くて安い軽自動車にも関わらず、安っぽい車体でヨレたりしない。だからオフロード以外でも運転に対する不快感が無い(乗り心地や騒音は酷いけど)。最新の軽自動車ならもっと良いだろうけど、格安の軽自動車でここまでしっかりとした車体を持っている車はほとんど無いと思う。

マーチ(AK12)やMCC SmartKと比べるとワインディングでの楽しさは劣る。でもパジェロミニの場合はどんなシチュエーションでも楽しい。運転と言うよりは操縦と言った方が良くて機械を操っている感はすさまじく、運転しているだけで楽しいし遅くても楽しい。そして、軽自動車だから全てにおいて扱いきれる範疇にある。「軽自動車だけど・・・」ではなく「軽自動車だからこそ」だ。これなら少々割高でもジムニーを買っても満足出来たかもしれないと思うものの、ジムニーの中古車は非常に割高なので、コスパ的にはやっぱりパジェロミニだと思う。常識的な範囲でのオフロード走行なら充分満足出来る性能だし、ダートに入ればどうしたって汚れたり傷ついたり壊れたりするから、底値の中古車の方が心理的な敷居は低い。

 

追記

購入後ガンガン走って現在11万kmだけど、トラブル皆無で何も壊れない。パジェロミニはATが故障するという情報が散見されるけど、MTだとミッションのトラブルも無い。既に20年以上前の車両なのに本当に何にも壊れないし、スムーズによく走る。元々シンプルな構造とはいえ驚異的な信頼性で、散々トラブルに見舞われたsmartKの後だけに拍子抜けしてしまう。お陰でパジェロミニに関するネタは一向に増えない。

 

追記

頑丈だしシンプルだし、古い車両だけど10年は乗れるだろうと思ったら呆気なく壊れた。どうやらこの年式の持病らしく当たり外れが有る様だけど、まさかトランスミッションが壊れるとは思わなかった。MTでも壊れるんだなぁ。

 

振り返って

長く乗るつもりが結局2年経たずに乗り換える事になってしまった。乗り換えた後に改めて振り返っての感想。

とても良い車だったと思う。故障しなければ乗り続けていた。まず、軽自動車規格で、極めてシンプルな構造で、しっかりとした車体で、縦置きエンジンのFR駆動という車自体が稀有だ。乗っていて面白いし、所有しても面白い。ただ、じゃあ改めて乗り換えるか?と問われれば僕は選択しない。僕のオフロード走行比率は極めて低いからだ。パジェロミニのメリットを享受出来るシチュエーションはとても少なく、逆にデメリットを被るシチュエーションはとても多い。

特に気になる難点は2点。

1つはエアコン使用時のパワーダウンが著しいこと。軽自動車なので仕方がないとはいえ、元々が非力な上にエアコンでパワーを食われると加速が極端に鈍る。ただし、冷却系は割と余裕が有るみたいなので、オーバーヒート気味になるのを心配する必要が無いのは良かった。この辺りはターボエンジンにする事で回避出来ると思うけど、NAエンジンを引っ張り回して乗るのはそれはそれで面白かった。

2つ目はギヤ比。ワインディングはもちろんのこと、市街地走行でも合わない。1速が極端に低いのと、3速と4速が離れ過ぎていて加速をスムーズに繋げられない。駆動系をミニキャブから流用しているという情報からの推測に過ぎないけど、これは4速MT時のミニキャブの影響を受けているんじゃないかと思う。4速MTなら3速と4速が極端に離れているのも理解出来る。1速が極端に低いのもダート走行に合わせたというよりは商用車のギヤ比を流用しているだけの様に思える。車体が良かっただけにギヤの繋がりが悪いのは残念だったし、ギヤ比が適切ならもっと面白い車になっていたと思う。

そんな訳で、週末に登山に出掛ける程度なら楽しめる車だけど、毎日長距離通勤するには不適な車だ。ユーザーの使い方次第なので悪い車では無いと思う。ミッションが壊れるのは勘弁して欲しいけど。

 

 

 

 

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