- 作者: 乾 くるみ
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2007/04/10
- メディア: 文庫
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あらすじ
僕がマユに出会ったのは、代打で呼ばれた合コンの席。やがて僕らは恋に落ちて・・・。甘美で、ときにほろ苦い青春のひとときを瑞々しい筆致で描いた青春小説−−−と思いきや、最後の二行目(絶対に先に読まないで!)で、本書は全く違った物語に変貌する。「必ず二回読みたくなる」と絶賛された傑作ミステリー。(本書裏表紙より)
レビュー
あらすじを読む限り、最後のオチ以外はベタな恋愛小説、と言っている様なものですが、まぁ時にはベタな小説も良いかなと読んでみました。
が、まずベタベタ過ぎるのと、「僕」の頼りない面、例えばファッションに疎いのを人間性の問題にすり替えて誤魔化してみたり、アルコールを使わないと会話を盛り上げられなかったり、いざって時ですらイニシアティブを取れない頼りなさだったり、あらゆるネガな部分が若かりし頃の自分とオーバーラップして、「もう、何やってんだよ!」ってイライラして読むのが苦痛。その割にはラスト付近ではアレだし。生きていく上で、いろんな選択を迫られる事は仕方ない事だし、1人の人間が抱えられるものなんて知れているのだから、そこで何かを切り捨てなければならないのも仕方が無い事なんだけど、それにしてももうちょっと何とか・・と思ってしまいます。どうでも良い所では自分とオーバーラップし、肝心な所では感情移入できない。
物語の展開も衝撃(?)のラストも、なんだか想像通りでした。あらすじを読んだ印象から裏の裏を読み過ぎたみたいで、もっとあんな展開やこんな展開を想像していたもんだから拍子抜けしちゃいました。結局はベタな恋愛小説なんだけど、後味の悪さが何とも言えない。とてももう一度読み返したいとは思えないんだけど。
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2読目の評価
★★★☆☆
イレギュラーな評価の仕方ですが、ちょっと特殊な小説なので、最初のレビューはそのままにしておきます。
まず、作者のトリックにまんまと引っ掛かりました。トリックに引っ掛かったというよりも、引っ掛かった事にすら気付いていませんでした。指摘されなければ、今後も気付かないままだったでしょう。完全にやられました。「1読目と2読目で評価が変わる」というのもうなづけます。
そこで、もう一度冷静に考えてみたのですが、確かにトリッキーな小説としては面白いと思います。でも、何故1読目で面白いと思えなかったのか、小説内の至る所にバラまかれたヒントに気付いていながら、肝心のトリックに気付けなかったのか、というと、前半の小説でタレてしまったからです。つまり、「この先どうなってしまうんだろう?」とか、甘美な恋愛気分に没頭出来なかったとか、恋愛小説として引き込まれる要素が無かったからです。これから山場となる後半部分に入った時には興味が薄れてしまって、かなり読み飛ばしてしまいました。
ミステリーものというか、トリックものとして、読み飛ばす事は致命的な行為です。それをしてしまった僕が悪くもあり、それをさせてしまった小説もまたしかり。つまり、「ミステリーとしては面白いけど、恋愛小説としてはイマイチだった」という事です。なので、恋愛小説としての評価が★2つに加えて、巧妙なトリックで★1つという評価。恋愛小説としての評価が初回より上がっているのは、僕が内容を勘違いしていたからです。
もちろんこれは個人的な評価なので、評価は人それぞれだと思います。数有る恋愛モノでも人によって好き嫌いが有るでしょうから、僕には合わなかったというだけの事だし、「面白いかどうか」で言えば面白い小説です。なので人にも勧めたくはなりますが、これは(これに限らずミステリーモノは)何の予備知識も無く読んだ方が面白いでしょうから、ここまでアレコレ言ってしまうのは良くないですね。
しかし、こういうのって本当にありがちな気がしますね。恋愛(というか女)って恐い。
とりあえず、興味のある人は一度読んでみて下さい。