シングル スマイル

目指すのはジャンガリアンな生き様

  親を亡くすということ










父さんが入院した。先月病院に運ばれて、その後随分と回復して退院したから安心してた矢先のこと。



僕は父さんが大好きとか、父さんを尊敬しているとか、そういう感情は特に無かった。子供の頃から母さんが僕に父さんの愚痴をこぼしていたからかもしれない。愚痴の内容は、僕にしてみればどっちもどっちだったけど。心から尊敬できる様な父親ではなかったけど、かといって軽蔑する様な人でもなく僕をちゃんと育ててくれた。当り障り無い極普通の父親っていうあたり、正に僕の父親なんだろう。それに僕自身良い歳になったんだから両親ももう年老いていて当たり前で、既にもう人生のカウントダウンは始まっている。
だけどいざ父さんが倒れたら、思いのほか動揺している自分が居る。表面上はさして変わらないんだけど、心がざわめく。病院に運ばれる直前まで、僕の子供に小遣いを渡そうとしていた。その薄っぺらい封筒は、物凄く重い。
こういう話を迂闊にこぼすと、大抵当たり障り無い表面的な慰めの言葉を掛けられるのは分かってるからあえて話すことも無い。そんな話振られても困るだろうし。
ただ、別に何か答えて欲しいとか期待する訳でもなく、ただ何となく「父さん入院したんだ」ってこぼしたら、自分のお父さんが亡くなった時の話を聞かせてくれた人が居た。母さんも随分年老いたとも。


年齢だけは大人になり、やがて結婚して子供を育て、子を持つ事で随分と変わった。人として成長させられた。だけどまだ先が有ったんだ。親を失う事で、更にまた大人になるんだろう。

その人の話は面白くも無く、驚きも無く、ただ僕の心に強く響いた。大人になった人の言葉には強い力が有る。