シングル スマイル

目指すのはジャンガリアンな生き様

 イタリア人がやって来た










部長が不在の間に取り次いだ電話の相手は、イタリア人だった。流暢で丁寧な日本語を話すそのイタリア人は、日本の商社のイタリア支店の営業マンで、「イタリアにこんなエエもん有るけど、話だけでも聞かへん?」ってな内容。後日部長に「イタリア人が会いたいって言ってましたよ」って伝えると、「オレは良いわ。興味有るならお前聞けば良いやん。」って言われた。えぇ、オレかよ。面倒くせーなぁ。って一瞬思ったものの、いや、これはある意味とても良い機会じゃないの、と思い直した。というのは僕は工場勤務の技術職で、まず工場から出る機会が無い。技術職なのに、新しい物事に触れる機会が無い。それでも仕事は回っていく。だけどそんな保守的で良いの?新しい物事や、新しい人に出会う機会が目の前に転がっているのなら、「面倒くさい」じゃなくて「これ幸い」って飛びつかなきゃ。本来なら僕はメンテナンス部門だから設備のリニューアルには携わっていないんだけど、関係部署の人に声を掛けてもみんな「オレは良いや」って言うし、向こうが僕でも良いから会いたいって言うなら会って話聞いてみようって事で、イタリア人商社マンと会う約束をした。
当日訪れたのは、電話で応対したイタリア人商社マンと、イタリアの機械メーカーのエンジニアの男性の2人。2人ともヒゲ面で、長髪ヒゲ面の僕でも何の違和感もない。ヒゲトリオでテーブルを囲む。まずイタリア人すげーなー!って思ったのは、2人ともジャケットだったって事。営業ならスーツが当然だけど、カジュアル過ぎず堅過ぎないシンプルなジャケットと派手過ぎないシャツ。しかも商社マンはともかく、エンジニアのおっさんもオシャレ。うわ、イタリアのオッサンめっちゃオシャレやんけ。先日自前のスーツを新調した時に、スーツって何でこんなに保守的なんだろう?って凄く疑問に思ったんだけど、きっと日本のビジネスシーンは保守的なんだろうな。イタリア人の着こなしはスリムスーツの比じゃない。まぁ、普通のおっさんがイタリア人の真似してもあんなにオシャレにはならないだろうけど。
あとは、エンジニアのイタリア人は自分の説明が終わると退屈しのぎかiPhoneイジってた。普通は営業シーンでスマホはイジらないよな(笑) でも、やる事やって暇なら良いんじゃね?って思わせるのはイタリア人だから? それに対して商社マンの方はめっちゃ律儀で丁寧で、「9時の約束でしたが電車の到着が9時になる為、約束の時間を9:10に変更してもらえませんか?」とか、「タクシーがつかまらなくて9:30になります」とか、あれれ? イタリア人ってもっとアバウトでいい加減なんじゃねーの?って笑えた。日本人営業マンやサービスマンだって無断で思いきり遅刻したりすんのに、10分20分構わんよ。そんなに気を遣わなくても良いのに。
設備の話はともかく、なかなか面白かった。営業に付き合って「あぁ有意義だったな」って思えたのは久しぶりだった。最後にガッシリと握手して別れる辺りも海外っぽいなって思いつつも、何だかすごく楽しかったよ。でも楽しかったのはきっとあの商社マンだったからなんだろうな。


手土産にイタリアのリゾット(フリーズドライ)をくれた。うーん、美味いのかなぁ。