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目指すのはジャンガリアンな生き様

私は存在が空気/中田永一  甘いお菓子は食べません/田中兆子

 

 

 

私は存在が空気

私は存在が空気

 

 存在感を消してしまった少女。瞬間移動の力を手に入れた引きこもり少年。危険な発火能力を持つ、木造アパートの住人…どこかおかしくて、ちょっぴり切ない、超能力者×恋物語。恋愛小説の名手が描く、すこし不思議な短編集。

★★★☆☆

レビュー

「吉祥寺の朝比奈くん」の作者。図書館で見掛けて冒頭部分を読んで面白そうだったので借りて読んだ。

淡い恋愛感情は絡むけど、恋愛小説という密度じゃない。超能力を扱う辺りはSFっぽいものの、バリバリのSFという感じでもなく、ファンタジーに近い。それに適度なミステリーが組み合わさって、更に都合の良いハッピーエンドで終わらせない辺りは良かった。

小説というよりはラノベに近い印象。短編だし、読みやすい。

 

 

 

 

甘いお菓子は食べません (新潮文庫)

甘いお菓子は食べません (新潮文庫)

 

 頼む……僕はもうセックスしたくないんだ。仲の良い夫から突然告げられた妻の動揺。〈土下座婚活〉が功を奏して知り合った男性に、会って3時間でプロポーズされた女の迷い。念入りに掃除をし、息子に手作りのおやつを欠かさない主婦が抱える秘密。諦めきれない悟れない、けれど若さはもう去った。中途半端な〈40代〉をもがきながら生きる、私たちの物語。心に深く刻み込まれる6編。

★★★☆☆

レビュー

40前後の女性目線で進められる短編集。どこかのお勧めだったか、書店の店頭で見かけたのか、気になったので読んでみた。

これはドキュメンタリーかと思うほどのリアリティ。僕は男性なので本当の意味での女性目線は分からないけど、婚活やセックスレス等、大人の女性の心情を執拗に描写する。あまりにリアルで救いようが無いから陰鬱な気分になってしまいそうだけど、例えば全ての問題が丸く収まってハッピーエンドとか、突然王子様が表れて救い出してくれるとか、そんな短絡的な展開にはなっていない所は良かった。それでも少しだけ前を向いて進んで行く様もまたリアル。あまりにもリアルで、一体この小説で何を問いかけたかったんだろう?って悩んでしまった。

女性が読んで「有る有る」と納得するもよし、男性が読んで女性の心情を紐解くもよし。生きていく事は、年齢を重ねる事は、何も悪い事じゃないはず。