シングル スマイル

目指すのはジャンガリアンな生き様

MCC smart K 詳細とインプレッション

 

はじめに

素人のインプレなので主観的で偏っていて一般的な感覚とは異なるだろうし、比較となるベンチマーク的な車両を運転した経験も無い。2004年製の古い車なので今更インプレする必要も無いだろうけど、自分が運転する車として一通り確認しておきたいのと、古い割にはいまだに中古車市場に出てくる事を見るとそこそこ需要は有るんじゃないかと思うので参考程度に。ちなみに僕は「どうしてもスマートに乗りたかった、スマートでなければダメだ」と言う様なフリークではなく、どちらかといえば妥協して選んだクチなのでその点では割と客観的かもしれない。

スマートに関する記事一覧はこちら

 

smartとは

スマートは、スウォッチとベンツの合弁会社MCC(Micro Car Corporation)が開発販売した二人乗りのシティコミューター。「Swatch」と「Mercedes-Benz」の両社の頭文字に芸術(art)を組み合わせて「smart」。上手い事言ったつもりだろうけど世の中には「smart」と名が付く物品やサービス等は星の数ほど有って、ネットで情報を検索する時は非常に面倒くさい。ちなみに後にスウォッチは撤退し、MCCの名称もsmartに変更になっている。その辺りのいきさつはこちらを読むと良く分かる。バックグラウンドを知るのもなかなかに面白い。

www.reno-auto.net1998年に販売開始、2002年にマイナーチェンジ、2007年にフルモデルチェンジ、2014年のフルモデルチェンジでルノーと共同開発した現行モデルになる。スマートKが正規販売されたのは2001年頃から2005年頃までで、その後カタログ落ちしている短命なモデル。

4人乗りのsmart for four、ドロップヘッドのスマート・クロスロード、スポーツタイプのロードスター等も販売されたけど、業績不振によりそれらも短命に終わっている。

各車両の画像はこちらを見るとまとめられていて分かりやすい。スマートKは基本的には初期型(のマイナーチェンジ版)。

cargeek.jp

 

 

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MACHINE SPEC

モデル smartK 2004年式

乗員 2名

全長×全幅×全高 2540×1470×1550mm

ホイールベース 1810mm

トレッド 前1285 後1325mm

車両重量 750kg

エンジン 直列3気筒SOHC ICターボ 598cc

ボア×ストローク 63.5×63.0mm

圧縮比 9.5

最高出力 55ps(40kw)/5250rpm

最高トルク 8.2kg・m(80N・m)/2000~4500rpm

駆動方式 RR(リヤエンジン/リヤホイールドライブ)

トランスミッション マニュアルモード付6速AT

サスペンション 前マクファーソン 後ド・ディオン

ブレーキ 前ディスク 後ドラム

タイヤ 前135/70R15 後145/65R15

最小回転半径 4.1m

燃料タンク 33リットル

使用燃料 ハイオクガソリン

ESP装備 パワーステアリング

 

 

各部詳細

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全長2540mm。超短い。鳥山明がデザインしたのか?と思う様な外観で、15年以上経過した今でも斬新。黒い部分はトリディオン セーフティセルと呼ばれる非常に剛性の高いフレームで、白い部分はポリカーボネイト製の外装になる。フレームが黒なのはスマートK特有なので、Kか普通車か判断するにはフレームを見ると分かる。フレームは驚くほど頑丈(動画参照)。これだけの衝撃が加わればドライバーもただでは済まないだろうけど、少なくともぺちゃんこになる事は無い。小さい割には大して軽くないのは、この強靭なフレームのせいかもしれない。

youtu.be

 

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横幅は1475mm。リヤフェンダー部分が僅かに軽自動車枠からはみ出してしまった普通車版スマートの幅を詰めて軽自動車枠に押し込んだのがスマートK。フェンダー部分だけなので室内空間もエンジンも基本的には普通車仕様と変わらない。だから軽自動車だけど白ナンバーで登録した。スマートのエンジンが何ccかなんて余程の物好きでなければ分からないだろうし、普通車のスマートとスマートKの見分けがつく人もほとんど居ないだろう。

 

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フロント周り。ボンネットやメンテナンスハッチの類は無く、修理やメンテの際はフロントカバーをごっそり外す必要が有る。なんて整備性の悪い車だ、って思ったけど実際に作業してみるとそこまで面倒臭くない。フルカウルのバイクみたいな物だ。とは言うもののフルモデルチェンジ後は小さなボンネットが設けられている所を見るとやっぱりみんな面倒臭かったんだろう。

ワイパーは支点が左右端に有って両開きするタイプ。拭き残し部分も多く微妙なんだけど、右ハンドルでも左ハンドルでも影響しないのは造る側からすれば利点なのかもしれない。購入時ウォッシャーポンプが壊れていた。定番なトラブルっぽいので注意が必要なポイント。

 

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リヤサイド。普通車版のリヤタイヤは175なのに対しスマートKは145なので見た目はかなり貧弱だけど、簡単には破綻しない。こんな小さい車にリヤワイパーは要らないだろうって思ってたら、雨の日は凄く汚れる。自分のリヤタイヤで巻き上げるからだ。なのでリヤワイパーは残しておいた方が良い。

 

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右サイドに給油口。国産車の様に給油口を開けるオープナーは無くて、ドアロックと連動している。燃料はハイオクガソリンでタンク容量は33リットル。今の所燃費は大体18km/L位で、500km位無給油で走れるので意外に航続距離は長い。フロトガラスとリヤサイドガラスの雨漏りも定番トラブル。リヤサイドはガラス製ではなくてポリカーボネイト製。

 

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スマートはそのコンパクトさからトヨタiQと良く比較されているけど、構造上は三菱アイに良く似ている。構造だけでなくフロントオーバーハングがほとんど無くて流線形なのも良く似ている。

 

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全長はアイ3395mmに対しスマート2540mmで、855mm短い。大体後部座席分が無くなった様な感じ。軽自動車と比較すると3/4程度だけど、5ナンバーの全長は全長4.7m以下なのでフルサイズの普通車と比べると半分くらい。

 

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幅は軽自動車と変わらない。三菱アイもシティコミューターとしては秀逸で、アイの方が「smart for four」らしい。個性的なデザイン、見た目によらず広い室内、切り詰められたオーバーハング、取り回しの良さ、信頼性の高いメカ、トップエンドまでストレス無く回るエンジン、RRなのに違和感を感じさせないスタビリティの高さ等利点は数多く有って、三菱アイの唯一の欠点は「MTの設定が無い」という事だけ。マニュアルモードは不要で、どうしてもsmartでなければいけないという訳では無いのなら、三菱アイの方が完成度と満足度は高いと思う。

 

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リヤは、リヤガラスとリヤゲートの2分割。ガラスのハッチが上に開く構造。取手が無いのでちょっと開けにくいのと、リヤガラスを開けるには運転席足元のスイッチを押すかキーで開けなければいけないので、ハッチのボタンを押すと開く今時の車に慣れていると面倒くさい。でも後部座席が無いのでちょっとした荷物でもラゲッジを開けなきゃいけなくて操作頻度は高め。リヤガラス開けて走れば涼しいかも(開けたまま走るなと書いてあるけど)。運転席のバケットシートは社外品

 

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リヤガラスを開けて、リヤゲードを開く。リヤゲートの内側は樹脂製のカバーで汚れにくくなっていて、ベンチみたいになる。ラゲッジは外観からイメージするよりは広いけど、ラゲッジの下にエンジンが有るので深さは無い。それでも大人2人分の荷物位は問題無く積めるので、超コンパクトな2シーターにしては意外に実用的。

 

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普通車版の屋根はガラスルーフなのに対し、スマートKはFRP。別にガラスじゃなくても良いんだけど、FRPのクリヤ塗装が劣化して浮いてくる。

 

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ホイールが困った事にPCD112mmの3穴。こんなホイールはスマートしか無いので、アルミホイールや交換用を探すのが大変。前後でホイールの幅が違う。ホイール固定はナットではなくボルトで、外すには15mmのレンチが要る。

 

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ドアミラーは手動調整式で室内のレバーで動かす。手で倒しせば格納する事は出来るけど、元々小さな車なのであんまりメリットが無い。調整部が壊れるのも良くあるトラブルみたいで、僕の車両も助手席側が上手く動かない。電動や格納はともかく、ミラーは小振りで形状もイマイチで視認性は良くない。スポーツカーじゃないんだから、もう少し何とかならなかったのか。

 

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普通車版スマートはポップな柄が入っているけど、Kはグレーのツートン。地味だけど落ち着いた感じで、おっさんが乗るには逆に有難い。簡素な造りで薄めのシートだけど、座り心地もホールドも悪くなくて疲れなくて良い。ただ、運転席側はやや後ろに傾斜するだけ、助手席側に至っては傾斜もしないので車で寝るのは至難の業。

シートは薄めだけどシートレールがかさ上げされているので座面は高く、視点が高い。視界確保の為なんだろうけど男性だと視点とルームミラーの高さが重なって左前方が見にくい。シートリフターの機能は無いので座面を下げる事も出来ない。

 

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助手席側は前には倒れる。何となくBOBLBEEを彷彿させるデザインで、背面にドリンクホルダが有るのがシュール。倒してテーブルにするならフラットな方が良いだろうに、スウォッチのセンスは良く分からない。背面は鋼板製で、事故時に後部からの飛来物に対し乗員を保護する様になっている。らしい。助手席を倒すとそこそこ広い空間になるので、独りなら工夫次第で車中泊も可能。

 

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インパネは非常にチープでまるで軽トラ並み。各スイッチ類の節度も大して良くない。大型のスピードメーターと液晶のインジケーター。アバウトではあるけど水温計が有るのは良い。スピードメーターはフルスケール140km/hと控えめだけど、どうやら140km/h辺りでリミッターが働くみたいだ。タコメーターはオプション(画像の物は社外品)。Kのハンドルはコストダウンの為ウレタン製になってる。細かなディンプル加工が施されていて操作感は悪くないけど、ハンドル形状が2本スポークなのでハンドルをぐるぐる回すと何処が上だか瞬間的に分からなくなる。ハンドルに調整機能(チルト/テレスコ)は無い。ポジションは悪くないけどドライバーの体格に合わせての微調整は不可。パワーステアリングは無い。ネット上のインプレでは苦にならないと書かれているけど、指一本でも回せる今時のパワステに慣れると結構重くて慣れないとうっかり切り遅れる。

タイヤハウスの影響でペダル配置が左寄りになっているらしいけど、特に違和感は感じなかった。僕が鈍感なだけかもしれない。それよりもペダルが重い。アクセルもブレーキも操作が重い。オートマチックのくせに繊細なコントロールを要求されるので、重いペダルでは微妙な加減がし難い。

 

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イグニッションはシフト部分に有る。N(ニュートラル)ポジションで始動、停止。Nから手前に引くとR(バック)。Nから左に倒すとA(前進/オートマチック)。シフトレバー側面のボタンを押すと、A(オートマチック)/マニュアルが交互に切り替わる。マニュアルモードでもシフトダウンは自動的に行われる。ある程度減速すると勝手にシフトダウンする。マニュアルモードでは勝手にシフトアップしない。レブリミットまで回してもシフトアップせず、リミットで回らなくなるだけ。NからR、NからAはブレーキペダルを踏みながら操作しないと安全装置が働いて切り替わらない(液晶表示がOになる)。国産車の様なPポジションは無く、Nでは動いてしまうので停車時はかならずサイドブレーキを引いておかないといけない。

スマートで総じて酷評なのがトランスミッションで、ATでありながら変速ショックが大きく国産車と同じつもりでいると面食らう。仕組みが普通のMTのクラッチとギヤチェンジを自動化した物で、そのギヤチェンジに時間が掛かり過ぎて加速が途切れてぎこちなくなるからだ。特に勢いよく加速する時はショックを低減させるのがかなり難しい。これなら普通のMTにして欲しかった。

リモコンキーは赤外線なので指向性が有り、受信機(ルームミラー付近)に向けないとリモコンが機能しない。スマートはイモビライザー(盗難防止装置)がついているので、リモコンでロックを解除しないとエンジンが掛けられない構造になっている。リモコンはボタン部分が壊れやすいので注意。中古車の場合はスペアキーが無い場合も有るので注意が必要(新たに購入すると37000円程度掛かる)。

スマートKはドリクホルダまでオプション扱い。全く無いのも困るので、たまたまヤフオクで売っていた中古を付けといたけど何故か穴がやたらとデカい。ドイツではドリンクもデカいのか? 国産車と比べると収納がとても少ない。ダッシュボードすら無い。

 

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空調類とオーディオ。チープなのはまぁ良いとして、操作スイッチ類にイルミネーションが無いのが厄介で夜間は手探りで操作する事になる。慣れてないと本当に分からない。

オーディオは懐かしのカセットデッキ。壊れてないのでアダプタを使用してそのまま使っている。ラジオの入りは良い。バカデカいアンテナのせいかもしれない。

エンコンは一応普通に効いている。ただ、日本の道路事情は考慮されていない為、渋滞や信号待ちなどアイドリング状態では効きが悪い。走っていればそこそこ効く。

 

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ラゲッジの下にエンジンが有る。直列3気筒インタークーラーターボ598cc。エンジンルームに押し込まれたインタークーラーをファンで冷却するという涙ぐましいシステム。エンジンはSOHC2バルブという今時軽トラでも使っていない様なメカニズムで全然回らない。レスポンスも悪く、小排気量だから2千回転以下もトルクが無い。ミッションは6速有るから駆使して走れば良いだろうと思いきや、シフトチェンジに時間が掛かり過ぎて機敏に走れない。

3気筒だけどツインプラグなのでスパークプラグは6本有る。ノーマルプラグは非常に消耗が激しいのでマメに交換する必要が有る。オイルパンにドレンボルトが無いので、オイル交換は上抜き(オイルレベルゲージから抜き取る)。車外のエンジン音は大きめ。三菱アイもうるさいから、リヤエンジンはそんなものかも。大した防音対策してないのに室内は意外にうるさくない。

ハイスペックなエンジンではないけど、ターボエンジンである事とリヤに積載されている為熱的に厳しい事から、オイル交換はマメにやった方が良さそう。エンジンパワーは、独りでエアコン切って運転する分にはストレスは感じない。2人乗車でエアコンを入れるとかなりパワーダウンする。

 

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インマニに誇らしげなMercedes-Benzのロゴ。こんな所は普通は見えないんだけどロゴをペイントしてみた。

レスポンスは悪く高回転も回らずトルクの立ち上がりも比較的急激で、ベンツだからと言って特別良いエンジンとも思えない。唯一評価出来るのはアクセルに対して割とリニアな反応をするという事で、国産車によくある加速感を出す為に急峻過ぎるレスポンスとか、逆にスムーズに感じさせる為にダルダルなレスポンスとか、そういう小手先の誤魔化し的な違和感は感じない。フルモデルチェンジで三菱製エンジンに代わっているから、他に流用が効かない小排気量エンジンは造りたくなかったのかも。エンジンは国産軽自動車の方がマシだと思う。

 

インプレッション
市街地 ★★☆☆☆

コンセプトが日常的な足としてのシティコミューターなので市街地走行は得意分野、かと思いきや、とんだ曲者。メリットは車体が小さい事。その1点だけ。ただいくら小さくても駐車場は一台分占有するので、メリットを生かせるのは路上駐車の時に隙間にねじ込める事くらい。車体は小さいけどルームミラーもバックミラーも小さくて見難くて、後方視界が非常に悪くて気を遣う。ハンドルもペダルも重く、硬めのサスペンションは路面の凹凸を顕著に拾ってゴツゴツする。癖の強いミッションは1速→2速、2速→3速でショックが大きく、ストップ&ゴーを頻繁に繰り返したり渋滞でノロノロ動いたりするケースが多い市街地走行は逆に苦手。低速での右左折等、速度が落ちた時に意図せず勝手にシフトダウンしたりクラッチが切れたりするので、加速出来ない空白時間が生じる。かといってアクセルを踏めばいきなりクラッチミートして唐突に加速する。スムーズに走らせるには、そろりとアクセルを踏んでクラッチミートさせてから加速、という様なオートマチックらしからぬ繊細な操作を都度要求される。スマートのミッションはクリープ現象が起きないから、登り坂でブレーキを離すと後ろに下がるという点も気を付けなければいけない。

市街地では、多少大きくても国産軽自動車の方が遥かに運転しやすい。街中でのスピードレンジ(加速具合)なら変速ショックの粗は出にくいので扱いやすくはあるけど、それはスマートにしては扱いやすいというだけで国産車から比べたら扱いにくい事には変わりない。いずれにせよ「小さくてオシャレ」以外のメリットは何もない。

 

ワインディング ★★★☆☆

可愛らしい外観と裏腹に、思いのほか良く走る。剛性の高いがっしりとしたシャシーと硬めのサスペンションはまるでゴーカートの様で、非常に安定性が高く尚且つクイック。締め上げられた硬いサスも、重いけどリニアでダイレクト感の有るステアリングも、この為に有るのか?と思う程。これはシティコミューターではなくコーナーリングマシンじゃないのか?

ただ、やっぱりエンジンとミッションがネック。レスポンスが悪くて全然回らないエンジンとタイムラグが著しいミッションのお陰でドライバーの感覚と全くシンクロしない。運転の楽しい車はやたらと変速したくなるものだけど、スマートは変速すると失速したりぎこちなくなったりするから変速の度にストレスを感じる。比較的緩やかなコーナーや下りは頻繁なシフトチェンジをしなくても良い分いくらかは走りやすいけど、加速/減速が激しいタイトコーナーが連続する様なシチュエーションだとシフトチェンジが間に合わない。

エンジンパワーは1人でエアコン切って運転する分には上り勾配でも苦になる程非力じゃない。ただ、上は回らず下はトルクも無く、ある程度機敏に走らせようとすると4千回転辺りをキープする必要が有るけど先述の通り積極的にシフトチェンジしたくないのでジレンマに陥る。余りにも回らなくて呆気なくレブリミットまで達してしまうから、タコメーターは必須。

硬いサスとホイールベースの短さから、ギャップ(でこぼこ)に入ると簡単にABS(ESP)が働く。破綻するほどではないけど、荒れた路面では程々に。

外見に似合わず侮れないポテンシャルを秘めていて、車体の剛性感と安定性はちょっと感動的だけど、それを生かしきれないのが残念。慣れれば何とかなるかと思ったけど、ドライバーの感覚についてこないエンジンとミッションは何ともならない。そういう走り方を求める車ではないのは分かっているけど、車体が良いだけにもったいない感じはする。

 

高速走行 ★★★★☆
短いホイールベースなのに直進安定性は悪くない。三菱アイよりも感覚的にはずっと安定感が有る。120km/h程度なら苦にならないし、メーターを振り切る位の速度でも車体は安定しているけど、どうも140km/h辺りでリミッターが働くみたいなのでノーマルだとそれ位が限界になる。

登り勾配だと非力なのは否めず、4~5千回転辺りをキープしたくなる。そういう状態が続くとちょっと焦げ臭い臭いがしたので、熱的に厳しいのかも。三菱アイは高回転をキープしても特に何事も無かったけど、スマートの場合は高負荷を続ける様な運転をするなら良いオイルを入れておいた方が良さそうだ。ただ、登坂車線を走らなければいけない程非力じゃない。

110km/hを超えた辺りから風切音が酷くなる。また横風には特に弱く、トラックを追い越すだけでも揺れる。車体的にはかなり余裕が有るけど、合法的な速度域で走るのが良いかと思う。トップスピードは伸びないけど合法的な速度域なら充分で、車体の高い安定性と頻繁にシフトチェンジしなくても良いという点で意外にも最も苦にならないシチュエーション。

100km/hは、5速で4千回転、6速で3千回転位。比較的低回転で走れるけど6速はかなりハイギヤードでトルクが細る為あくまでもクルージング用。登り勾配や加速時は使えない。

 

参考動画

一般道(30~60km/h)

車体 エンジン/吸排気/サスペンション ノーマル

タイヤ ブリヂストン BLIZZAK VRX 145R65/15(F/R)

カメラ DB POWER ドライブレコーダー

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感想

可愛らしい外見で、面白いけど癖が強くてトラブルも多い。そう言うとローバーミニとかVWビートルが思い浮かぶけど、それらに比べると設計が新しい分安全性は高い。でも設計が新しいから面白いというものでもないし、長い期間支持されてきた車はアフターパーツが豊富な分維持はしやすいので、それに比べると古いスマートは中途半端になる。

こんなに小さい車なのに高い剛性感と安定感が有るのは驚かされる。内装はチープだけど車体はしっかり造られていて面白い。反面、国産車とは違って操作感はかなり癖が有る。ハンドルもアクセルもブレーキも丁寧な操作を要求されるから、スイッチON/OFFみたいなアクセル操作をする様な人ではスムーズな運転は出来ない。それはスマートに限った事では無いけど、スマートだとより顕著になる。

運転する楽しさはどうかというと、全体的には前に乗っていた日産マーチ(MT)の方が楽しい。マーチは車体もサスも弱いけど、MTが秀逸で日常的な市街地でさえ運転するのが楽しかった。対してスマートは車体とサスは秀逸なんだけどエンジンとミッションが楽しくない。構造が似ている三菱アイと比べた場合は、オートモードで運転するなら三菱アイの方が良い。何の不満も無い。三菱アイにはマニュアルモードは無いからマニュアルモードで運転するならスマートになるけど、出来の悪いマニュアルモードにどれだけの付加価値があるのかは微妙なところ。

スマートのメリットは、「小さい」「個性的でオシャレな外観」「車体の安定性と安全性が非常に高い」という点。信頼性、快適性、維持費は国産車の方がマシ。なのでそのメリットが自分にとってどれだけ重要なのか、他のネガティブな要素をどれだけ我慢出来るかをよく考える必要がある。はっきり言って古いスマートは出来損ないだ。でも、良く出来た車だから面白いという訳では無いし、出来損ないだからつまらないという訳でもない。

一応フォローしておくと、スマートを運転する事は誰でも出来る。ただ国産車の様に乱雑に扱っても車側が勝手にスムーズな処理をしてくれないだけ。どちらが良いかは好みの問題。うちの奥さんが運転したら「こんなもんじゃない」と言って意外に普通に運転してた。色々詳しく知らない方が幸せなのかもしれない。流行りのトールワゴンみたいな室内空間を求めなければ充分実用的だし、突き詰めた運転をしなければ粗は出にくい。

 

追記

有る程度妥協して購入したもののトラブル多発と出来の悪さで幻滅してしまったんだけど、しばらく運転してみて、これはこれでアリなのかもしれない、むしろ良い車なのかもしれない、と 思える様になった。

というのは、車体がとても良いからだ。剛性の高いシャシーと固められたサスペンションはコーナーリングが非常に楽しい。安い車でエンジンパワーに対して完全にシャシーが勝っている車というのは国産車ではほとんど無い。先の通り、エンジンとミッションの出来は悪く、ドライビングの楽しさをかなりスポイルしている。そのせいで突き詰めた走り方には向いていない。でも、スポーツカーではなくツーリングカーと思えば我慢出来る。RRとはいえドライバーのすぐ後ろにエンジンを載せているからほとんどミッドシップみたいなもので、コーナーリングのフィールは痛快だ。もっとマシな欧州車に乗ればもっと面白いんじゃないか、と思うかもしれないけど、これ以上の車は一般的な公道では持て余す。僕の技量では公道で扱いきれるのは軽自動車レベルで、だからスマートは丁度良い。スマートロードスターの方がベストだろうけど、安さと利便性を考えるとスマートKはかなり優位だ。

ピュアなスポーツカーはロードゴーイングレーサーと呼ばれるけど、スマートはロードゴーイングゴーカート、公道を走れる実用的なゴーカートだ。古くてトラブルが多く、ネガティブな面も沢山有るけど、意外に実用的だし納得出来るなら稀有で面白い車なのかもしれない。

 

シフトチェンジのコツ

今までMTでスムーズに変速出来ていたから、スマートの変速ショックが気になって不快になる。しばらく自分なりに試行錯誤してみて苦にならないレベルまで操作に慣れたけど、それでもそれなりに考えながら操作しないとスムーズに走れない。加速時の変速ショックよりも、減速から加速に移行する時の不意のシフトダウンによる加速出来ないラグの方がかなり不快。別に変速ショックを気にしなければ誰でも運転出来るので、スムーズに操作したい人だけ考えれば良い事だけど、スムーズに変速出来ればクラッチやミッションに掛かる負担も減るので車にも優しい。

・ATモードでの変速タイミング

アクセル開度が低い(ゆっくり加速)時は3000rpmでチェンジする。意外にさっさと変速する。中開度(ほどほど加速)で4000rpmでチェンジ、全開で5800rpm(トップエンド)で変速する。これらはエンジンが暖まっている場合。始動直後だとエンジンを暖める為になかなか変速しない。変速のタイミングが分かれば、ATモードでもある程度スムーズに出来る。

・ベストタイミングは4000rpm

マニュアルモードでシフトチェンジする場合、大体4000rpm付近でチェンジするとスムーズで変速完了までが速い。ただ、4000rpmというのは感覚的にフル加速の7割程度の加速感で、混雑した市街地等の緩い加速では加速し過ぎで、思い切り加速した時には回し足りないからシフトチェンジするには中途半端な回転数で使いにくい。別に4000rpmでなければ変速出来ない訳じゃない。

シフトアップはアクセルをあまり戻さない

シフトチェンジのショックはアクセルを緩めると解消されると書かれているけど、緩め過ぎてもショックが生じる。ほとんど緩めない位が丁度良いし、変速するまでの時間も短い。4000rpmでアクセルペダルは一定にしてシフトチェンジするとかなりスムーズになるけど、周囲の交通事情でいつも4000rpmに出来る訳じゃないのが悩みどころ。シフトチェンジしてクラッチが繋がった瞬間に減速する感じがしたらアクセル緩め過ぎ、加速する感じがしたらアクセル踏み過ぎ。ほとんど加速も減速もせず、シフトチェンジ時にピッチングを起こさないのが理想的だけど、加速具合や道路の傾斜具合等で絶えず変化するから難しい。

・低速は自分でシフトダウンする

右折左折、徐行からの加速等、減速するとマニュアルモードにしていても自動的にシフトダウンする。シフトダウンしないとノッキングしたりエンストしたりするからやむを得ないんだろうけど、自動でシフトダウンすると変速するギヤの選定やクラッチ操作の為に加速出来ない空白が生じる。ほんの1、2秒程度だけど今まさに加速しようというタイミングで加速しないのは相当なストレスになる。加速時のシフトチェンジラグはある程度ドライバーでコントロール出来るから、どちらかと言えば低速時のシフトダウンからの加速の空白の方がストレスが大きい。これを予め自分でシフトダンしておくと、加速に移る時は既に変速済みだから即加速する。マニュアルモードの最大の利点は「自分でシフトダウン出来る」という事、つまり減速から加速に瞬時に移行出来るという点だ。ブレーキングして自動でシフトダンするのと、ドライバーがシフトダンするのとでは、加速する時にかなり差が出る。タイミングが悪いと、自動でシフトダウン+マニュアルでシフトダウンしてしまって猛烈なエンジンブレーキが掛かるので注意。

スマートのシフトチェンジに関してはネット上でも様々なコツが書かれているけど、アクセルを緩めるとか、緩めないとか、自動でシフトダウンさせた方が良いとか、一貫性が無い。当たり前だ。一貫性(再現性)が有るなら、メーカーがその様にセッティングしているはずだ。加速具合、路面の傾斜はもちろん、車のコンディションやドライバーの感覚、良く使う速度域などによって違ってくるから、何をどの様にどれ位やれば良いかなんてその都度違う。シフトチェンジしてクラッチが繋がった時に、加速も減速もしない変速が出来ればスムーズだし機械に対しても優しい。

 

スマートは「買い」か

古い外車だけあってコンディションには気を付ける必要が有る。実際に自分で買って乗ってみて、スマートを勧められるのは「どうしてもスマートに乗りたい」と思っている人か、壊れたら捨てる位の割り切りが出来る人、そのどちらかだと思う。ちょっと面白そうだからしばらく乗ってみたい、という僕の様なケースが一番タチが悪い。安い車両では予期せぬメンテや修理が次々と発生するから、短期間乗る為に金を掛けて整備するのは割に合わないからだ。

どうしてもスマートに乗りたい、というなら、あらゆる整備を自分で出来る人以外は割高でもスマート専門店か、スマートに強いショップで購入する事をお勧めする。安く売っているショップも有るけどそういう車両は潜在的に色々不具合を抱えているはずで、トラブルを潰していたら結果的に2、30万円余計に掛かってしまった(専門店の割高な車両と変わらなかった)、なんて事になりかねない。潜在的なトラブルが無い車両なら、そもそも安くない。専門店以外では、スマート特有のウィークポイントや対処方法も把握していなくて対応してもらえないかもしれない。だから後々ちゃんと面倒を見てくれる車屋さんも必要だ。古い車なのでどうしてもある程度の手間と金を掛けてメンテナンスする必要は有る。僕は維持費の問題から軽自動車にしたけど、軽自動車じゃなくても良いというのであれば2007年以降のフルモデルチェンジ後の車両にしておいた方が良い。内装が今時のレベルになっているのと、エンジンとミッションが幾分改善されている。

 

購入時の確認ポイント

納車点検・整備は当然一通りやってもらうとして、それ以外に僕が感じた注意すべき点。

・異音、異常振動は無いか

シフトチェンジのタイムラグはともかく、ガタつきの様な異常な変速ショックが無いか。前進/後退の切り替えに異音や異常なショックは無いか。エンジンに異音は無いか。走行時に異音は無いか。エンジン、ミッションの修理は非常に金が掛かる。必ず試乗してから買った方が良い。これはスマートに限った事では無い。

・雨漏り(フロント/リヤサイド)

車内の窓枠付近に水が流れた跡が有るか、無くてもフロアマットやエンジンカバー付近が濡れていないか。修理履歴が無い古い車両はほぼ全て雨漏りしていると思われる。雨漏りの修理は素人では出来ずかなり高額になる。

スペアキーは有るか

リモコンが故障するとエンジンが掛けられなくなる。スペアキーは改めて作ると高額。リモコンの状態もチェック。

・スパークプラグは交換してあるか

かなり消耗が早い。未交換のままだとエンジントラブルに発展しかねない。プラグは6本必要だし、プラグ交換には専用ツールが必要で金が掛かる。交換履歴が分からなければ、購入時に交換しておくべき。

・ウォッシャーポンプ

ウォッシャー液が出るか。ポンプのモーターに水が入って故障する。部品代は互換品なら安いけど、フロントカバーを外さないと交換出来ないので工賃が掛かる。ウォッシャー液が出ないと車検が通らない。

・パワーウィンドウは動くか

定番の故障。部品は社外品だと比較的安価に手に入るけど、交換作業が困難で工賃が掛かる。

・エアコンは効くか

エアコンは効くか。作動時に異音はしないか。

・ドアミラーは調整出来るか

調整部がよく壊れる。

 

これらは後からでも作業出来るけどショップに依頼すると結構な金額になるので、不具合は購入前に全て洗い出して納車整備に入れるか、値引きの材料にした方が良い。スマート専門店はスマート特有のウィークポイントを把握しているだろうし対策もしているだろう。その分高額。

オイルフィルターエレメントやエアーフィルターエレメントは意外に安くネットで売っているので消耗品はあまり困らない(互換品なら)。ただ、ショップに交換を依頼すると金が掛かる。ネットで見た記事ではオイル交換で1万円とか。自分でやれば3千円くらいで済む。