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目指すのはジャンガリアンな生き様

ある男 平野啓一郎

 

 

 

愛したはずの夫は、まったくの別人であった――。
「マチネの終わりに」の平野啓一郎による、傑作長編。

弁護士の城戸は、かつての依頼者である里枝から、「ある男」についての奇妙な相談を受ける。
宮崎に住んでいる里枝には、2歳の次男を脳腫瘍で失って、夫と別れた過去があった。長男を引き取って14年ぶりに故郷に戻ったあと、「大祐」と再婚して、新しく生まれた女の子と4人で幸せな家庭を築いていた。
ところがある日突然、「大祐」は、事故で命を落とす。悲しみにうちひしがれた一家に、「大祐」が全くの別人だという衝撃の事実がもたらされる……。

★★★☆☆

 

レビュー

YouTubeを眺めていたら映画のプロモーションが出てきて、面白そうだったので原作小説を読んでみた。

結婚した相手が実は全く別人だった、という設定は興味深かった。現実的にはなかなか難しいとは思うものの、個人を形成するものは何なのか、という事を考えさせられる。

ただ、登場する主要な人物は良い人か悪い人とかなりハッキリしている。分かりやすくはあるけど、個人を形成するもの、というおぼろげなものを取り扱うにはちょっと白黒はっきりし過ぎな印象。誰しも色々な側面はあるものだし、違う面から見れば印象が180度変わったりもするし。

あと、主人公?の弁護士のエピソードって要るのかな。かなりの文量を割いているんだけど、それは弁護士でも人間的な側面は有りますよ、という為なのか、調査対象者たちに共感していますよ、という為なのか。出会いから結婚、その後の生活もわりとあっさりしていたし、その分を調査対象者たちのエピソードに振った方が良かったのでは?とも思う。

結果、映画で見た方が良かったかな。