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目指すのはジャンガリアンな生き様

FORD Ka スペックとインプレッション

 

フォードKaを購入してから2ヵ月くらい経つ。長距離通勤でがっつり走っているのでいい加減評価しても良いと思うんだけど、この車を的確に言語化するには経験と語彙力が足りない。それでもとりあえず一度詳細を記しておく。

日本ではさっぱり売れなかった超マイナーな古い外車なので、この車の評価を気にする人は多くないだろう。なのでこんな記事に大した意味は無いかもしれないが、マイナーな車種なだけに詳細な情報も少ない。極稀に中古車が出てくるけど、長期間在庫になる事無く売れていくので需要は有るのかもしれない。

本題に入る前に断っておくと、僕の車に対する嗜好は快適性とか利便性、高級感よりも極力簡素な物を好むので世間一般的な評価とはかなりズレている。それに、何と比較して評価するのか、何を重視して評価するのかで結果は全く違うものになる。それらを踏まえ、素人でかなり主観的な意見だという事は了承頂きたい。

 

 

FORD Ka 1999年式 パンサーブラックメタリック

 

スペック

全長×全幅×全高:3660×1640×1400

ホイールベース:2450

トレッド前/後:1395/1410

車両重量:940kg

ステアリング:ラック&ピニオン油圧

サスペンション前:ストラット

サスペンション後:ツイストビーム

ブレーキ前:ディスク(ソリッド)

ブレーキ後:リーディングトレーリング

ホイール前後:5j-13インチ オフセット+36 PCD108

タイヤ前後:165/65R13

エンジン:1.3L Endura-E

エンジン形式:直列4気筒OHV8バルブ

排気量:1293cc

燃料供給:インジェクション

最高出力:60ps/5000rpm

最大トルク:10.5kg-m/2500rpm

瞬間許容回転数:5675rpm

燃料タンク:42L ハイオク

トランスミッション:5速マニュアル

駆動方式:FF

 

サービスデータ

エンジンオイル:3.25L(オイルフィルタ交換時)

エンジンオイル:2.75L(オイルフィルタ未交換)

エンジンオイルグレード:10W40

バルブクリアランス(冷間):IN 0.2/EX 0.5mm

ブレーキフルード:DOT4

タイヤ空気圧:2.1kgf/cm2

ヘッドライトLO:H7 55W

ヘッドライトHI:H1 55W

車幅灯:ウェッジベースバルブ5W

ウインカー前:21W黄色

ウインカーサイド:ウェッジベースバルブ5W

ウインカー後:21W

ブレーキ:21W

テール:5W

バック:21W

バックフォグ:21W

ハイマウントストップ:ウェッジベースバルブ×5個

ルームランプ:フェアストーンバルブ10W

 

 

この時期にフォードが提唱していたニュー・エッジデザインに基づく個性的な外観。曲線とそれをバッサリ切る様な直線で構成されている。最低地上高の記載が無いけど意外に低く、ルーフも低い。小さいながらもワイド&ローな雰囲気を醸し出している。

 

Kaの日本向け仕様はラジエターとエアコンを強化されていて、それに伴い欧州仕様に比べるとフロントが40mmほど長くなっている。

黒色だと目立たないけど、バンパーはボディカラーと関係なく一様にダークグレーで塗装されている。後にボディカラーと同色で塗装される様になった。

 

タイヤをなるべく四隅に押しやってホイールベースを稼ぎ、前後のオーバーハングを切り詰めている。フィエスタ(2代目)のプラットフォームを流用していて、ホイールベースもフィエスタと同じ2450mm。このクラスの車としてはホイールベースは長い。タイヤはスタッドレスタイヤで純正サイズとは異なる

 

リヤもニュー・エッジデザイン。3ドアでCピラーが極太なボディ形状なので剛性が高い。

 

真後ろから見るとなかなかヘンテコリン。国産車の様に室内空間の為に四角にしていなくて安定感が有るデザイン。純正のタイヤサイズは165で細いので、もっと貧相に見える。(画像のスタッドレスタイヤは175/65R14)。

 

テールハッチは、カギか運転席のボタンでしか開けられないので今時に車に比べると不便。給油口は左側。給油口のキャップはカギで開ける。

 

丸くてまとまりの有るデザイン。単純そうなデザインに見えるけど、ボンネットがフェンダーに向かってうねってたりして意外に凝ってる。でも無駄にゴテゴテしたデザインになっていないのは好感が持てる。

 

フロントは普通にストラット。スタビライザーは装備されている。

 

フロントのストラットとブレーキ。ナックルに、ショックアブソーバーのシリンダーが差し込まれている。Kaのブレーキキャリパーはピストン径が2種類有るけど、日本向け仕様はコストダウンの為に小径が使われているとKaユーザーの方が教えてくれた。ディスクローターもベンチレーテッドではなくソリッドディクスだ。見えない所も徹底してコストダウンしているのに、走りが面白いのは何故だ?。

 

リヤサスペンションはツイストビーム、ブレーキはドラム。ボトムレンジの車だから構造も簡素。発売時はオプションでスポーツマフラーの設定が有ったらしい。

 

ツイストビームとトーションビームは何が違うのか分からない。

 

搭載されるエンジンは直列4気筒OHV2バルブ1293ccの通称「ケントエンジン」と呼ばれる物。一応インジェクションだけど基本設計は50年以上前の物で、幾度かの改良を繰り返して使い倒してきた伝統のエンジン。アイドリングはディーゼルエンジンの様にガラガラと煩く、正に原動機といった感じ。ただ、長年使い続けられているだけあって普通に使いやすい。今時無い機構とフィールで面白いエンジン。

 

OHV形式だけど、吸気はシリンダー後方から、排気はシリンダー前方となっている。シリンダーもシリンダーヘッドも鋳鉄製だからめちゃくちゃ重そう、この辺りはハンドリングにも影響しそうだ。

 

エキパイを跨いで、左がトランスミッション、右がオイルパン。エンジンオイルのドレンプラグは後側に付いているし、オイルフィルターエレメントも後ろの奥に有る(画像の真ん中辺り)ので、リフターが無いと整備しにくい。ミッションオイルを抜くドレンプラグが無い。元々無い。

 

トランスミッションから後方へ伸びるロッドはシフトのリンク。やけに太いシャフトで、しっかりとした剛性感のあるシフトフィール。

 

大型化されたラジエターとエアコンの放熱器。欧州仕様と比べてどの程度違うのかは分からない。日本向け仕様だと部品が専用品になるので、故障した時に部品が入手出来るか心配。熱交換器だけでなく、接続されるホースや配管も専用品になってしまうだろうから。

 

ボンネットとフロントガラスの境目には整流板の様な物が施されている。ワイパーで乱流を発生させない為だろうか。それなりの速度で走る事を想定しているのかも。

 

インパネ周りは簡素で、MTしか設定が無いのにタコメーターが無い(後付けで追加している)。ダッシュボードも一体成型で、すさまじいコストダンの意気込みを感じる。

ステアリングは良い。見た目は安っぽいウレタンハンドルだけど、グリップ部分の径が太過ぎず細過ぎず丁度良い太さで、ステアリング径も大き過ぎず小さ過ぎず丁度良い。ステアリングの2本スポークはやや下側に向けられていて、ステアリングを3時45分の位置で握っても阻害しない様になっている。この握りやすさは秀逸で、今まで乗った車の中で一番良い。ただ、ステアリング位置の調節機構は無い。チルトもテレスコも無い。

スイッチ類の節度も悪くない。イグニッションキーは棒状の独特の形状で、メカキーの握り部分にイモビライザーがついている。イモビライザーが無い状態ではエンジンを始動させられない。また、イモビのせいで、エンストした時は一旦イグニッションをOFFにしてからじゃないと再始動出来ない。

ライト(スモール)が点灯していると、エンジンが掛かった状態でもドアを開けると消し忘れ防止アラームが鳴って結構ウザい。なのにイグニッションキーを差したままドアを開けてもキー閉じ込み防止アラームは鳴らない。というのも、Kaはキーでしかドアロック出来ない(ドア側でロックしてドアを閉めてもロックされない)から、そもそもキーの閉じ込みのしようが無いという事なんだろう。

 

メーター周りも簡素。スピードメーターは20km/h以下が省略されたフルスケール220km/h。でも全開でもそんな速度は出ない。ウインカーの表示灯は左右共用で1つしかない。燃料計に残量警告灯が無いけど、燃料計が有るから特に困りはしない。が、水温計が無くオーバーヒートの警告灯しかない。古くてOBD端子からデータが取れないからメーターの追加が難しい。メーターが浮かび上がる背面照明ではなく、表側から豆電球で照らすタイプ。オドメーターは万の位までしかないので、10万km以上走ると0に戻ってしまう。

 

ダッシュボード上端にアナログの時計がついている。意外に狂わない。時計の中の赤色のLEDは盗難防止装置の動作表示灯になっている。エアコンの吹出口は90度回すとシャットダウン出来る。純正オーディオはラジオとカセットテープ。動作的に問題は無いけど、ボリュームがダイヤルではなく、しかも他のボタンと酷似したデザインなので運転中に操作しにくい。プリセットボタンの2~5の部分が外れる様になっていて、ボタンを外すと盗難防止装置が働いて操作出来なくなる。

 

空調のスイッチ周り。完全なアナログスイッチだけど操作はしやすい。吹出口の設定ダイヤルが3ヶ所しか無いけど、調整ダイヤルは無段階になっていて中間位置で使える。エアコンスイッチの横にはバックフォグランプのスイッチが有る。空調のダイヤルに下にあるカバーを開けると、灰皿とアクセサリ電源(シガーライター)が有る。アクセサリ電源はエンジンを切った後も1時間程度通電状態を保持するので、電力を消費する機器を繋ぎっ放しにするのはやめた方がいい。

 

ドアミラーはバイクのバックミラーみたいだ。昔スズキでこんなミラーが有ったような。一応ミラーの調整は電動で出来るけど上下動作が渋くて動かないので、スイッチを押しながらミラーを手で押して動かしている。右側は良いけど左のミラーは一人では届かない。電動ミラーは日本向けの特別仕様らしいけど、こんな事なら手動調整の方がマシだった。ドアパネルは内側も鉄板剥き出し部分が有る。磁石が付くしラベルも貼れるのでちょっと便利。

 

ステアリングコラムの下に、ボンネットオープナーが有る。赤色のレバーを引くとボンネットが開く。給油口のオープナーは無い。給油口のリッドにはカギが無く、給油口のキャップにカギが有る昔ながらの構造。なので給油する時はイグニッションキーを抜いてキャップを開ける必要が有る。

 

ABCペダル。見た目はとても安っぽいけど配置は良くて、運転した瞬間にヒール&トゥ出来るんじゃないかと思わせる秀逸さ。これは僕だけでは無く知人も言っていたので客観的な感想だと思うけど、逆にヒール&トゥを全くしない人にとってはペダルの間隔が狭過ぎて違和感が有るかもしれない。ペダルの操作感も重くないし、アクセルもブレーキもリニアなフィールで良い。ただ、フットレストが無いので運転中の左足の置き場が無く踏ん張りも効かない。適当にフロアを踏んでおけという事か。

 

ドアのヒンジはかなりゴツい構造。スマートほどではないけど、Kaもしっかりしている。ドアを閉じる音も安いコンパクトカーとは思えない重々しい音がする。

 

パワーウィンドウは運転席側もオートスイッチにはなっていない。古い外車のパワーウィンドウは故障するのが当たり前みたいな印象が有るけど、Kaのパワーウィンドウが故障したというトラブルは見掛けない。

ドアのオープナーレバーを逆に押すとドアロックされる。ドアポケットがドリンクホルダーを兼用している。安っぽいしドアの開閉時に飲み物がこぼれちゃうだろって思っていたけど、ドアポケットのアールに合わせてドリンクホルダーの大きさが異なっていて、様々な大きさの容器に対応が出来るから意外に使い勝手が良い。ドアポケットの所にある丸い物はオーディオのスピーカー。

 

ダッシュボードには回転式の小物入れが有る。

 

天板を回転させると小物入れが現れる。取説には「カセットテープ等を入れられます」と書いて有るけど、今時カセットテープって。小物入れでしかないので、車検証などは入れられない。

 

Kaの日本向け仕様はサンルーフが標準装備になっている。トラブルや雨漏りの心配が増えるので正直有難迷惑だ。実際に時々動かなくなるので触らない様にしている。ガラスルーフなので開放的かな、と思ったら頭上なので運転中は視界に入らないので関係なかった。

 

リヤサイドのガラスは大きめで左後方も見やすい。ハメ殺しではなく、隙間が開くタイプ。ただ、後部座席でなければ操作出来ないので開ける機会が無い。

 


後部座席全景。コンパクトカーなりだけど、大人でも一応座れる。但し定員4名なので軽自動車と変わらない。経年でクッション(ウレタンスポンジ)が劣化して粉が出てくるのと、シート生地もめくれてくる。出来れば直したいけど、後部座席の使用頻度はほとんどないので後回しになってる。

 

僕が運転席のポジションを決めた時の後部座席のスペース。フルバケットシートにしているので、純正シートよりは少し広めになっている。足周りはまあ良いとして、177cmの僕が座ると天井に頭が当たる。ルーフが傾斜しているので、後部座席にゆとりが無い。シートの背もたれは角度を2段階に変えられるけど、寝かせても画像の状態なのでこれ以上寝かせられない。右側にだけ小物入れが有る。

 

後部座席のドリンクホルダーはフロアと一体成型になっている。涙ぐましいコストダウンだけど、後席にもドリンクホルダーを用意している所は評価したい。ただフロアカーペットと一体なので、こぼすと大変そうだ。

 

ラゲッジも狭い。底も浅いし幅も奥行も狭い。コンパクトカーなのでこんなものだろうけどフロア下や側面に収納が有る訳でも無く、スペースの使い方や工夫は国産車の方が良い。トノカバーの吊紐も右側だけしかなくて、こんな所までコストダウンしていて驚く。スペアタイヤはラゲッジではなく、車体後部の下側に吊り下げられている。

 

後部座席を倒すとラゲッジが広くなる。日産マーチ(AK12)の様に後部座席で段差が出来ないのは良い。後部座席背面に鋼板が当てて有るのは欧州車っぽい(事故時に後部からの飛来物で搭乗者が怪我をするのを防ぐためらしい)。

 

 

 

インプレッション

市街地 ★★★★☆

〇メリット

コンパクトな車体。扱いやすいエンジン。

×デメリット

ドアが大きくて開けにくい。3ドアは不便。後部座席もラゲッジも狭い。

インプレ

コンパクトな車体で取り回しは良好。ドアミラー、ルームミラー、左後部窓も見やすく後方の確認はしやすい。MTだけど低回転からトルクが出るエンジンなので扱いやすいしエンストもしにくい。アクセルを踏めば流れをリードするのも容易いので、60psだから困る様なものではない。クラッチペダルは重くない。ブレーキ、アクセルも重くなく扱いやすい。ホイールベースが意外に長いので小回りは効かないと書かれているけど気にならない。

ラウンドしたボディ形状の為、車両前端は把握しにくい。パジェロミニの完全なスクエア形状には到底及ばないし、日産マーチ(AK12)の様にヘッドライトの突起で車両感覚を把握する事も出来ない。それでも所詮コンパクトカーなので、取り回しに困る様なレベルではない。

ドアが大きいので狭い場所だと大きく開けられず乗り降りがしにくい。後部座席は大人でも充分座れるけど、元々小さなボディな上にリヤが傾斜した形状なのでとても快適とは言えない。2ドアなので後部座席への乗り降りは前席を倒さないと出来ないし、荷物を置いたり取ったりもやり難い。狭い車なのでラゲッジの使用頻度は高いけど、ラゲッジを開けるには運転席に有るボタンかキーで開けなければならず面倒。ギヤの1速が意外にハイギヤードなので使える範囲が広い反面、極低速の渋滞だと速度が出過ぎて半クラッチを多用する場合がある。

コンパクトカーなので運転しやすいけど、今時の車なら軽自動車でももっと運転しやすい。なので、街乗りレベルでの運転のしやすさや快適性、利便性、経済性では、国産車には到底及ばない。ただ、今時の車と比べても運転は面白いし、最低限の実用性は兼ねている。

 

ワインディング ★★★★★

〇メリット

軽量で剛性の高い車体。適度な減速比のギヤ。扱いやすいエンジン。コントロールしやすいブレーキ。コントロールしやすいペダル配置。丁度良いステアリング。

×デメリット

ブレーキが熱的に弱い。エンジンがやや非力。

インプレ

何もかもが丁度良い。3ドア形状の車体は軽量で高剛性で年式の割にはかなりしっかりしている。ミッションの操作感は節度が良く、減速比も1速が低過ぎるとか5速が高過ぎるとかギア間が開き過ぎているという事も無く1速から5速まで全てがちゃんと使える減速比になっている。ブレーキは一見効かない様に思えるけど、最近の車の様に初期制動の立ち上がりが急激ではないだけで踏めば踏んだ分だけ効いてコントロールしやすい。ペダルの配置も良いのでヒール&トゥをしろと言わんばかりの印象。乗っていきなりヒール&トゥしたくなる車は初めてだ。ステアリングの大きさやフィールも丁度良い。

ハンドリングはやや個性的で復元力が弱く違和感を感じる時が有る。意図的にこういう味付けになっているのか経年で足回りが正常ではなくなっているのか詳細は分からないけど、今まで経験したFF車とは違うフィール。ステアリングの舵角の方へ行こうとする印象で、よりFF臭い感じがする。日産マーチ(AK12)ではFFを感じさせない極めてニュートラルな印象だったし、同じフォードのフィエスタ(mk7)でもこんな感じはしないけど、これはこれで特性を意識して運転すればメリットになるのかもしれない。

特に目立つデメリットは無いけど、あえて言うならフロントブレーキがベンチレーテッドディスクではなくソリッドディスクなので放熱しにくく、ハードブレーキングを続けると過熱する恐れが有る。ブレーキ容量的にもやや貧弱なのでハードブレーキングになりがち。

エンジンは60psでやや非力。レブリミットは5675rpmだけど4000rpmを超えた辺りから頭打ちな印象で、高回転で伸びるエンジンではない。峠道でしっかり加速するには3000~4000rpm程度回す必要が有るけど、ギヤ比が適切なので回転数は維持しやすい。パワーでは日産マーチ(AK12)にも劣るし、アルトワークスとどっこいどっこいだけどアルトワークスは200kg以上軽いので恐らく置いて行かれると思う。ただ、低回転からトルクが出るエンジンは扱いやすいしコーナーリング性能はかなり高い。極限までスピードを求めると難が有るけど、限界を突き詰めて走るのではなく峠道を楽しく走るならこれで充分だ。ネット上のインプレで「加速時は2段落とししなければ」と書かれてあったけど、そこまで非力では無いし高回転型ではないのでそんな乱暴な操作をしてはいけない。

 

高速道路 ★★★★☆

〇メリット

高速安定性が高い。良く出来たシート。

×デメリット

特に無し。

インプレ

コンパクトカーなのに高速直進安定性は良い。車体もしっかりしていて不安感は無い。100km/h時にエンジン回転数は3000rpmでまだ余裕が有る。欧州車なのでコンパクトカーといえど100km/h程度の巡行は当たり前にこなす。120km/h巡行でも不安は無いし、120km/h程度のコーナーでも不安感が無い。シートは安っぽい外観だけど出来は良くて疲れにくい。数百kmは余裕で走れる。

デメリットは特に思い当たらない。沢山乗れないし沢山積めないが、それはコンパクトカーだから当然だろう。年代的にクルーズコントロールの類は装備されていないけど、その手の機能を望む人はこんな車は乗らないだろう。このクラスにしては充分な高速走行性能だけど、車格的にも動力性能的にも高速クルージングが得意という訳では無いので★4にしている。

 

 

総評

車格はAセグメントなので欧州ではボトムレンジの車格だけど、日本には更に軽自動車規格が有りターゲットユーザーがバッティングする。Kaの日本向け車両は日本の事情に合わせてかなり大掛かりな手直しをしているし、サンルーフやABSなどのオプションも最初から標準装備になっている。にも関わらず価格を抑えていてメーカーとしてはかなり頑張ったと思うけど、思うようには売れなくて販売期間は2年で終了してしまった。

特異なデザインばかりが目立ってしまうけど、中身はオーソドックスでかなり真面目に造られている。「意外にしっかりしている」という印象は運転してすぐに実感出来るけど、運転した瞬間に「これは凄い!」と思える様な強烈で感動的なフィールではない。正直僕も最初はもっと官能的なのかと期待していただけに、実際に試乗してみて拍子抜けした。でも、しばらく乗っている間に「あぁ良いなぁ」「なるほどなぁ」とじわじわ地味に来る。どちらかと言えばドイツ車的な印象を受けるけど、フォード=アメ車というイメージが強くてドイツメーカーのメジャー所と比べると知名度や認識は弱い。乗る度につくづく良く出来た車だなぁと思う反面、そりゃ日本では売れないだろうとも思った。この良さは乗らなければ分からないし、良さが理解出来ても幾多の不便を押してまで所有する人は稀だろう。

使い古しのプラットフォーム(1989年発売のフィエスタmk3)に、これまた使い古しのエンジン(骨董品レベルのケントエンジン)、随所に涙ぐましいほどのコストダウンが見られるのに、走行性能に関わる部分は手を抜いていない。これは外観やスペックからでは全く想像が出来ない。僕自身、ここまで良い車だとは思っていなかった。20年以上前の安車なのに「もうちょっとこうなら良かったのに」と思う所がどこにも無い。運転する時に緩い靴を履きたくない。靴の中の遊び分、操作にズレが生じるからだ。逆に言えばそれだけ繊細な操作の違いがちゃんと反映されるという事だ。だから自分の運転の粗が良く分かるので、丁寧に上手く操作しようと常に意識させられる。これらは、内装や外装は見栄えが良いけど走行性能は今一つであったり、意図的に制御してレスポンスをダルダルにしてしまう国産車とは真逆の物だ。日本では評価されず全く売れなかったというのは非常に残念だけど、底辺の足車でも走行性能に関しては手を抜かないという欧州のスタンスは文化の違いなんだろう。

Kaを購入する決め手になったのは、ケントエンジンだ。クラシックカーかよ!?っていう様な古びたOHVエンジンを搭載した乗用車など今は皆無に等しい。KaはFFなので横置きに搭載されるけど、ケータハムスーパー7のベーシックモデルは1600ccのケントエンジンを縦置きに搭載している。つまりKaはFFのスーパー7であり、ロータス的であり、セミクラシックカー的と言える。いや言えないけど、そんな雰囲気は味わえる。これを手軽に味わえるのはKaしかない。非常にクラシカルなエンジンで60psしかないけど、軽量なボディと適切なギヤ比によって胸のすく様な加速をする。アクセルを踏む度に「うひょー!!」って言っている。何なんだろう?この快楽的なフィールは。

素性が良い車なので欧州ではアマチュアレースやラリーの下位カテゴリーのベース車両によく使われている。ただ、素性が良いとは言え後に出るフォード・フィエスタ(3代目)でかなり性能を底上げしているし、フィエスタにはSTというスポーツモデルも有るので今更Kaを使うまでもないだろう。と思いきや、未だにレース動画がアップされる。根強い。

 

他と比べてどうなの?

車格が良く似ている日産マーチ(AK12のMT)と比較すると、マーチが優位なのは5ドアの利便性とシフトのフィールくらい。それでもKaもしっかりとしたかなり良いフィールなので絶対的に有利とは言い難い。ただ、マーチもかなり運転しやすくて運転が楽しく、また個性的だ。使い勝手も良いし、イニシャルコストもランニングコストも劇的に安い。それらのメリットに対してそれ以上の魅力がKaに有るのかといえばかなり微妙だと思う。部品供給が滞り維持が難しい古い外車という事を考えると、誰にでも「Kaの方がお勧めです」とは言い難い。

フォード・フィエスタ(mk7)はBセグメントの欧州車の基準にもなりえるかなり完成度が高い車なので比較してみると(車格も年代も違うのであまり参考にはならないが)、Kaがフィエスタに勝るのはただ1点「軽い」事だけだ。比べるまでも無くトータルの完成度はフィエスタの方が圧倒的に良い。しっかりとしたボディ、トクルフルなエンジン、強力なブレーキで、良く走り、良く曲がり、良く止まる。ではフィエスタの方が良いのか?といえば、僕個人の意見としては、フィエスタは良いけどKaは楽しい。MTだからというのも大きな要因ではあるけど、フィエスタのMTが有ったとしてもKaを選ぶと思う。理由は2つ、軽さとパワー。フィエスタの車重は1160kgなので重い訳では無い。でも、ブレーキやコーナーのふとした瞬間にもっと重い印象を受ける時が有る。手足の様に操るというより、タイヤとブレーキの性能に頼っている印象。軽快感を感じるには車重は1t程度に抑えたい。もう1つ、エンジンの出来が素晴らし過ぎる。排気量は1リッターしかないのに低回転から溢れ出る様なトルク感で、感覚的には1500cc以上の印象。そんなエンジンだからマニュアルシフトする気にならない。頻繁にシフトチェンジしてパワーバンドに入れなくても、要はシフトチェンジしなくても走ってしまうし、軽く踏むだけで自分の操作出来る許容範囲を超えてしまう。完成度が高くて良い車だけど、僕には扱いきれない。それに対してKaは全てにおいて丁度良い。そういう評価をする人の方が珍しいと思うけど。

 

はっきりいってKaは遅い。グランツーリスモにKaの設定が有ったからプレイしてみた事が有るけど、日産マーチ(AK12)よりも明らかに遅かった。先日Kaユーザーの方も「サーキットではプジョーに全く敵わない」と言っていたので、グランツーリスモはあながち間違っていないだろう。パワーは無いし高回転も伸びないし、絶対的な速度は遅い。フルスロットルで加速する様な場面では非力感を感じる時も有るけれど、例え60psでも公道でフルスロットルで加速すればそれはもう暴走レベルだ。非力というのはサーキットや高速道路の様なパワーを充分に使える状況での話であって、日本の狭い峠道や市街地を走る分には問題にならない。少なくとも僕はこれ以上のパワーは必要無い。

何の変哲もないコンパクトカーが何故こんなにも面白いんだろう?って考えた結果、「全てが丁度良い」からだと思った。パワー感、ギヤ比やそれによる加速感、速度感、軽快感、車体のしっかり感、ハンドリング、ブレーキのフィール、それらの全てが丁度良くて自分の感覚と見事にシンクロする。思った様に走り、思った様に曲がり、思った様に止まる。当たり前の様だけど、ここまでシンクロする車は僕は今まで経験した事が無い。例えばうちにはダイハツのミラ・ジーノが有る。あの車もめちゃくちゃ運転しやすい。ただ、何となくふにゃふにゃした感じがする。日本の公道を走る分には、ミラ・ジーノは必要最低限の性能は満たしている、Kaは必要にして充分な性能、という印象。

 

 

最後に

先日知人と車の話をしている時に「お前の考えが普通だと思うなよ」と言われた。僕は軽くて簡素な車をMTで操るのが楽しいと思っている。そういう面倒臭い事や難しい事を自分でやるから楽しいと思っている。だけどそんな嗜好は世の中の主流ではないという意味だ。それはマーチの時から充分自覚している。長々と書いてきたけど、これらが共感されるとは思っていない。ただ、Kaは面白くて良い車だというのは断言出来る。例え世の中の主流じゃなくても。

 

 

参考動画

www.youtube.com新車情報(1999年)のフォードKaの回。おおむね評価は高いけど忖度で言っている訳ではない様で、実際に僕の感覚に近いと感じた。

 

www.youtube.comこれはワンメイクレース(サーキット走行)。Kaがわちゃわちゃ走る様子は可愛くて面白い。

 

www.youtube.comこれはラリー(ターマック)。エスコートとタメを張っている。もちろんかなりチューンしているだろう。加速や速度感がノーマルとは全然違う。競技車両なのに、みんなアナログ時計を取り外さずにそのまま付けているのが笑える。

 

www.youtube.comケントエンジンについて。Kaではないけど、スーパー7のケントエンジンの内部構造が分かる。排気量や縦置き/横置きの違いは有るけど基本的にはKaと同じだと思う。

 

 

 

 

 

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