シングル スマイル

目指すのはジャンガリアンな生き様

ラブカは静かに弓を持つ 安壇美緒

 

 

 

 

少年時代、チェロ教室の帰りにある事件に遭遇し、以来、深海の悪夢に苛まれながら生きてきた橘。
ある日、上司の塩坪から呼び出され、音楽教室への潜入調査を命じられる。
目的は著作権法の演奏権を侵害している証拠をつかむこと。
橘は身分を偽り、チェロ講師・浅葉のもとに通い始める。
師と仲間との出会いが、奏でる歓びが、橘の凍っていた心を溶かしだすが、法廷に立つ時間が迫り・・・

★★★★☆

 

 

レビュー

2019年に起きた、JASRACヤマハ音楽教室潜入の件をモデルとしたフィクション。音楽教室での演奏でも著作権料を支払うべきかどうか?という問題に対し、JASRAC職員が素性を隠して音楽教室に2年間通い情報を収集していた、という内容。名称や設定は若干異なるけど、明らかにあの件をモデルとしている。

主人公はJASRAC職員で音楽教室に潜入する側だ。幼少の頃チェロを習っていたが、ある事がトラウマになり辞めてしまった、という設定。著作権の問題も結末は見えているし、主人公設定も「トラウマで沈んでいたけど色んな人と出会って前向きになったよ」的なもう何回目だよっていうベタな展開も見え見えな訳で、端から結末が分かっているのにどうやって盛り上げるんだよ?

とあんまり期待していなかったんだけど、面白かった。主人公の展開はベタなんだけど、終盤にまさかそう来るか、という様な意外な展開も有ったり、細部もかなり良く作り込まれていて良かった。また、美人の同僚とか清楚な女子大生が登場するので「あぁまたありきたりなラブロマンスかよ」と思いきやそうでもないし、音楽教室の講師は男だし主人公も男だし、かといってBLでもなく、そういう点では非常に現実的で良かった。

裏側の立場から見ればこんな感じなのかな、という勧善懲悪でもないリアルさは良かった。ただ、やっぱり結末は見えているし、結末に関しては想像の範疇を超える事もなく、また人物描写にしてもそれぞれ個人を完全に書き分けられている様でもないので手放しで★5とは言えなかった。

それでも音楽は良いよね、楽器演奏良いよね、と思う。最近全然触って無いけどギター弾こうかと思った。