「この前、初めて２００km/h出してね。嬉しかったなぁ。」
「こんな天気の良い日はウズウズするね。」
僕はオジサンと秋晴れの空を眺めていた。もう５０才前後のオジサン。昔バイクツーリングで少し世話になった事があったんだけれど、子供が生まれてからは疎遠になっていた。そんなオジサンライダーと、久しぶりに会った。
「そうですね。」
相槌をうつけれど、僕はどうしてそんなに無邪気になれるのか分からなかった。それが１９、２０の若者なら分からなくもない。でも、５０にもなれば、良い事だけじゃなくて、色々経験してきているだろうに。それでなお、そんなに無邪気でいられるのはどうしてですか？周りがやめていく中、いまだバイクに乗り続けている僕に合わせるため？
苦労してバイクを直してきたのは、もちろんバイクに乗るため。じゃあ、どうしてバイクに乗るんだろう。無心で居られる年頃は、もうとうに過ぎてしまったよ。僕はバイクに乗り続ける理由を必死に探してる。
だけど、体は覚えてる。３年もまともに乗っていなかったのに、スロットルで、ブレーキで、コーナーリングで、僕の体が乗り方を思い出していく。思い描いたイメージとシンクロしていく。
僕がバイクに乗る理由も、思い出せるのかな。
