2012年の夏、梅田の楽器店でギターを眺めていた。
あの時の事は今でも覚えている。梅田の街は多くの人で賑わっていて、でも楽器店のアコースティックギターフロアは少し暗くてとても静かだった。MartinやGibsonなどの有名なメーカーからマイナーなメーカーまで色々なギターが展示してあって、その中にBADEN(ベーデン)のギターが有った。
BADENを知ったのは2009年の夏頃のこと。
雑誌で紹介されていたギターの内の1本だった。「特別高価ではないけど鳴りが良い」という評判だったけど、正直僕には音が良いのか悪いのか違いは分からない。ただ、とことん装飾を省いた極めてシンプルな造りと、特徴的な外観が強く印象に残ってる。最初はAstyleの方に惹かれた。シンプルながら特徴的なカッタウェイ形状で良いなと思った。対してDstyleは「なんじゃこりゃ?」という様な異様なデザインで最初はこれは無いな、と思っていたんだけど、これが後からじわじわと来る。これはこれでアリなんじゃないか。いや、BADENはDstyleこそ良いんじゃないか。そんな気がしてきた。
ただ、コスパが良いとは言えそこそこ良い値段するギターだった。今はオープンプライスになっているけど、当時は20万円弱~30万円程度の価格帯だったと思う(使われる材質によって値段が変わる)。アコースティックギターの値段としてはミドルクラスの価格帯ではあるけど、かといって簡単に手が出せる金額でもない。なので、憧れでしかなかった。
そもそもBADENというギターメーカーを知っている人が居るだろうか。アコギを長くやっている人なら知っているかもしれない。
2007年に元Taylor社のT.J. Baden氏が創立した新興メーカーだ。高品質なギターを手が届く価格帯で製造したいという思いで立ち上げられた。しかし、リーマンショックで世界的に経済が悪化した影響で2010年に倒産してしまった。梅田の楽器店で「もう手に入らないかもしれない」と書いているのは、BADENが倒産して製品の流通が止まってしまったからだ。新興メーカーで3年しか生産していないのだから、流通量は極めて少ない。中古品が出回る事も期待は出来ない。メーカーの公式HPも無くなってしまって、BADENはもう買えないギター、永遠の憧れだな、と思っていた。それが、2020年に復活している。AyersGuitarの協力の元復興したらしい。
なぜ今BADENの事をこんなにも長々と書いているのかといえば、たまたま欲しかったBADENのDstyleの中古品が、たまたま近くの楽器屋で売られていて、それが何とかギリギリ買えそうな値段で売っていたからだ。しかも無金利ローンが組めるらしい。

こんな事が有るだろうか。これは僕に「買え」と言っている様なものではないか。きっと運命の出会いに違いない。しかし中古とはいえ13万円もする。生活に必須の物でもないし僕の趣味の物でしかないのに、そんな金額出してまで買うべき物なのか。でもBADENがこんな値段で買える機会はもう2度と無いかもしれない。散々悩んで、でもこんな高価な物を自分一人の判断で買う訳にいかないので奥さんに相談したら「買えば良いんじゃない」とあっさり許可が出た。アコギ、エレアコ、サイレントギター、エレキギター、エレキベースが有るのに、まだ買って良いと言うのか。流石に気が引けるけど、これは一生モノのギターだ。運命のギターだ。
早速楽器店に連絡を入れて週末にギターを見せてもらう様アポを取ったら、
「すみません、ボディが割れていて売れません」
と言われた。
なんでやねん。運命とちゃうんか。