シングル スマイル

目指すのはジャンガリアンな生き様

口の悪いオヤジになりたい

本屋で手に取ったバイク雑誌に、バイク屋が紹介されていた。綺麗で明るい店舗に愛想のいい店員、という今時なバイク屋ではなく、口の悪いオヤジの下町的な古いバイク屋だとか。それが良いとか悪いとかではなく、その店主の「良いことも悪い事も言う」という言葉は、ちょっと考えさせられた。良いことは誰でも、誰に対しても言いやすい。反面、悪い事、特にそれが相手を否定する様な事は、なかなか言い難い。
僕はバイク屋ではないけれど、こうしておおっぴらにHPを開設している事もあって、極稀にバイクの相談をされる事がある。以前、「DR800に乗りたいんだけど」と言う人が居た。DRは楽しくて面白いよ。という様な返事をしたと思うのだけれど(覚えていないという時点で既に無責任な発言なんだけれど)、念願のDRを手に入れたその人は、あまりの乗り難さにすぐに手放してしまった。確かに誰もが簡単に自由自在に操れるという類のモノではない事は僕も分かっていたけれど、「好き」という情熱と慣れで対処出来る範疇だと思っていた。人それぞれのキャパシティがある訳で、残念ながらその人にとっては解決出来る範疇に無く、僕もそこまで想定出来なかった。
「SRXが欲しいのだけれど」と、相談された人が居た。なるべく実情に合ったアドバイスをし、その人も程度の良いSRXを買うことが出来て僕も喜んでいたんだけれど、喜びもつかの間、事故に遭った。幸いにも打撲程度の怪我で済んだみたいだったけれど、それ以降バイクから遠ざかってしまった。修理されたSRXは、その後動かされてないみたいだった。もしかしたら、もう手放してしまったかもしれない。だけど、それでも「バイクに乗りなさい」なんて言えないよね。「バイクに乗る」という事は、そういうネガティブな事からも目を背けられないということ。バイクを買った時にくれた写真には、綺麗なSRXと笑顔のその人が写っていた。でも、バイクで笑顔にはなれなくても、バイク以外で笑顔になれるのであれば、それはそれで仕方が無い事かもしれない。
僕自身、何度も投げ出され、車にぶつかり、膝はアザだらけになって、それでもなおバイクに乗らなければならない理由なんて自分でも分からなくて、そんな状態だから他人に「バイクは良いよ。君も乗りなよ。」などと軽々しく言う事なんて出来やしない。だけど、自分で考えて、自分で決意して、それでも乗りたいと思う人には、僕の拙い経験ではあるけれど助言してあげたい。偽善ではなく、あの口が悪いバイク屋のオヤジの様に、良い事も悪い事も言えるようでありたい。