シングル スマイル

目指すのはジャンガリアンな生き様

趣味と嫉妬とコストパフォーマンス

 

 

 

僕は嫉妬していたんだ。もう認めざるを得ない。

友人と山を歩き、今までの友人の山行話を聞いて、四季を通じて僕よりもずっといろんな山に登っている事に対して。それは今回一緒に歩いた友人だけではなく、他の友人に対しても、遠方の山に登れる事、泊りで縦走出来る事、高価な装備を購入出来る事、そしてその行動力に嫉妬していた。穏やかに平静を装って居ながら、内心は醜く嫉妬している。彼らに対して唯一僕の方が一歩抜きん出ている事が有るとすればそれは「体力が有る事」だけで、だからがむしゃらに歩こうとするんだろう。何とか彼らに追いつこうとして。だけどがむしゃらにひたすらに歩いたって離れるばかりで、一向に追いつけない。

それなら、自分も遠方の山に登れば良いじゃないか。泊りで出掛ければ良いじゃないか。と思うんだけど、独りで出掛けるのはコスパが悪い。かと言って仲間と行動出来るほど自由でもない。家族に無理を言って週末にわざわざ時間と金を使って遠方に出掛けるからには満足したい。そこまでして出掛ける価値が有るのか?ってまず考えてしまう。

 そういう考えをしている時点で、もう既にダメなんだと思った。だって、趣味なんて所詮ムダな物事なんだから。山に登る事に何の意味が有るのかなんてそれは後付けの理由でしかなく、単に「登りたいから登る」んだ。そこに効率を優先させてしまう様では、きっと楽しめない。登山を始めたばかりの頃は、ただただ歩くのが楽しかった。近場の低山でも、天気が悪くても、序盤の地味な急登でも、ただ歩ける事が楽しかった。いつから効率を求める様になったんだろう。

登山に勝ち負けなんか無い。なのに人に嫉妬してしまうのはどうしてなんだろう。僕は何をしたら心から満足出来るんだろう。何もかもを優先させる事など無理だとしたら、僕は何を優先させたら良いんだろう。

何度も登った白山を友人とのんびり歩きながら、僕はそんな事を考えていた。