シングル スマイル

目指すのはジャンガリアンな生き様

彼女と奥さんと少しだけ大人になった僕

彼女は何も言わない人だった。気に入らない事も、文句も、嬉しい事も、悲しい事も。だから穏やかに付き合えたかというと、そうでもなかった。赤の他人と一緒に過ごす内には、それだけでは済まない事が必ず出てくる。言わなければ分かり合えないし、何も言わなくても分かり合えるほど相性も良くはなかったし、結局彼女は何も言わない代わりに、最後に「別れよう」と言った。その後も彼女は未練があったらしいけど、4年の間何度も「別れよう」と言われ、その度に説得してきた僕にとって、恋愛は努力ではどうにもならないという事を学ぶにはもう充分だった。そういう僕自身、当時は行動も考え方も稚拙過ぎて、彼女を包容するだけの余裕が無かったんだけど。
ウチの奥さんは良く文句を言う。付き合っている間も、結婚してからも、事有るごとに色々言われてきた。奥さんは「これでも我慢してる方だ」と言うけどね。言い方がキツかったり、余計な一言で不愉快な思いをする事が多々あるけれど、でも考えみれば、いい大人に対して怒ったり、文句を言ったり、否定的な事を言える人がどれだけ居るだろう。奥さんの言いなりになる、というのではないけれど、僕だって完璧な人間じゃない。至らない所は沢山あるだろうし、そういう事を改めて考え直すきっかけにはなるはず。否定的な事をハッキリと言われれば、不愉快になる時もある。でも、言わないのもまた、罪なことでもある。
今の僕があるのは、彼女ではなく、奥さんと一緒だったからなんだ。そして僕は、昔よりも少しだけ大人になった。