シングル スマイル

目指すのはジャンガリアンな生き様

悶々

とりあえずバイクを自宅に持ち帰り、洗車して、各部をチェックしてみる。
得体の知れない謎のバイク、良く見てみると結構凄い。サスペンションはマルゾッキ、ブレーキはブレンボ、タンクはアチェルビスのポリタンクで、リムはアクロンのアルミリム。かろうじてキャブレターにケイヒンがついているけれど、主要パーツは欧州の一流メーカー製ばかり。更に、スイングアームはもちろんアルミ製で、サイレンサーもサブフレームもアルミ。シリンダーに至ってはマグネシウムだという。とてもスリムでコンパクトな車体で、正にファンタスティックなマシンだ。
謎のバイクの正体を調べてみると、80年代には世界選手権でタイトルを獲得した事があるメーカーだと分かった。前のオーナーの話では、「トライアルといえばベータかファンティックだった。当時新車が70万円くらいした。」と、言っていた。うーん、知らなかった。というか、ガスガスとか、スコルパとか、シェルコとか、ライダーでさえトライアルバイクのメーカーを知っている人は少ないと思うけど。
僕が知らなかっただけで、確かにすんごいマシンだ。これは当初考えていた20年前のホンダなど比べ物にならない。凄いなぁ。コレで走れたらさぞ面白いだろうなぁ。ただ、『走れたら』ね。長年放置された車両は、あらゆるゴムパーツが劣化してクタクタで、整備にはある程度自信があったけれど、部品が手に入らない事には直し様が無いし、整備に必要なデータも分からず、丸裸にしたセニョリータを前に僕は指をくわえて悶々と眺めるしかなかった。