シングル スマイル

目指すのはジャンガリアンな生き様

ボーナストラック 越谷オサム

 

ボーナス・トラック (創元推理文庫)

ボーナス・トラック (創元推理文庫)

 

 草野哲也は、雨降る深夜の仕事からの帰り道、轢き逃げ事故を目撃する。雨にさらされ、濡れた服のまま警察からの事情聴取を受けた草野は、風邪をひき熱まで出てきた。事故で死んだ青年の姿が見えるなんて、かなりの重症だ…。幽霊との凸凹コンビで、ひき逃げ犯を追う・・・。

★★☆☆☆

 

レビュー

昔はSFモノが好きだったな。と、kindleで小説を探している時に出てきたもの。評価が高かったのと、あらすじからどういう展開になるのか気になったので読んでみた。

あぁこれが伏線だな。犯人はコイツか!と思ったら全く見当違いで予想を裏切られた。悪い意味で。SFではないのはともかく、ファンタジーとしてもヒューマンドラマとしても中途半端な印象。個性的な登場人物も折角の個性が生かせず薄っぺらい印象で、肝心のラストも「マジか!?」という展開。悪い意味で。難しい事は考えず、単純明快スッキリな小説が読みたい、という人には合うかもしれない。

2004年発行なので15年前のデビュー作と言えばそういうものかな、とも思うけどこれが単行本1500円だと思うと買う気にはならない。評価は人それぞれだから良いんだけど、他人の評価ってあんまり宛てにならないんだな。

 

 

コンビニ人間 村田沙耶香

 

コンビニ人間 (文春文庫)

コンビニ人間 (文春文庫)

 

 「いらっしゃいませー!」お客様がたてる音に負けじと、私は叫ぶ。古倉恵子、コンビニバイト歴18年。彼氏なしの36歳。日々コンビニ食を食べ、夢の中でもレジを打ち、「店員」でいるときのみ世界の歯車になれる。ある日婚活目的の新入り男性・白羽がやってきて・・・。

★★★★☆

 

 

レビュー

今更だけど、芥川賞受賞作品で読みたかった作品。もはやkindleって何?状態。

あらすじを読む限りでは軽妙な印象を受けるけど、もっと切実な生き辛さを上手く書き表している。社会の常識から少しでも外れてしまう事が、どれだけ面倒な事なのか。

ADHDASDの兆候が見られるんじゃないか?とも思える主人公だけど、ここまでではなくとも何となく空気が読めなくて生活し辛いという人は潜在的に多いんじゃないかと思う。白羽が言う持論も自己擁護ではあるけど、でもそれだけではない様な。僕自身、周りの顔色を伺いながら迷彩服で周りに溶け込み、地雷を踏まない様に注意して生きている。

現代社会の常識、倫理観、道徳観というのはここ数年から数十年程度のもので、そういうものは時代に寄って移り変わっていくものだし、立場や視点が変われば180℃変わってしまうとても不確定なものなのに、どういう訳か皆自分の考えが正しいと思いがちだ。意にそぐわない言動をする人に対して、例え迷惑や実害を被っていなくても「非常識な人」「空気が読めない人」と一蹴する。短くて読みやすいけど、そういう人間の本質的な所や社会の違和感を上手く描いている。

先に地球星人を読んでしまったので、途中どういう着地点に持って行くのか不安になったけど、読後感は割と良かった。

 

 

渚にて 人類最後の日 ネヴィル・シュート

 

渚にて【新版】 人類最後の日 (創元SF文庫)

渚にて【新版】 人類最後の日 (創元SF文庫)

 

 第三次世界大戦が勃発し、世界各地で4700個以上の核爆弾が炸裂した。戦争は短期間に終結したが、北半球は濃密な放射能に覆われ、汚染された諸国は次々と死滅していった。かろうじて生き残った合衆国の原潜〈スコーピオン〉は汚染帯を避けてメルボルンに退避してくる。オーストラリアはまだ無事だった。だが放射性物質は徐々に南下し、人類最後の日は刻々と近づいていた。そんななか、一縷の希望がもたらされた。合衆国のシアトルから途切れ途切れのモールス信号が届くのだ。生存者がいるのだろうか? 最後の望みを託され、〈スコーピオン〉は出航する。

★★☆☆☆

 

レビュー

 kindle買ったのに相変わらず紙の本読んでる4冊目。

SFカテゴリーで高評価だったので読んでみた。あらすじからSFミステリーを想像していたら、どういう訳か一向に出港しない。半分くらいまで読んでようやく出港したと思ったらすぐに帰港しちゃうじゃないか。あぁ、これはSFチックなメカとかギミックとかそういう話ではなく、誰もが人生の終焉を迎える際にどういう状況になるのか、という事を描いているヒューマンドラマ的な仕上がりなんだ。

それはそれで良いんだけど、登場人物の誰にも感情移入出来ず、言動も何だかなぁという感じで正直読み進めるのが辛かった。後から知ったんだけど、これは1957年に書かれた作品らしい。それが今でも通用するというのはある意味凄い事なんだけど、僕にとって面白かったかどうかと言われればイマイチだった。