シングル スマイル

目指すのはジャンガリアンな生き様

 孝行

「渡す物が有る」と、母さんからメールが来たので、仕事帰りに実家に寄ると、小さな小箱を渡されました。それはビタミン剤で、「しもやけに効くから」と母さんは言います。あぁ、そういえば以前そんな話をしたっけ。僕は血管が細いからしもやけになりやすくて、今年は割りと暖かいけれどそれでもしもやけになりかけだと。成分と効能を読もうと貰った小箱の裏面を見ると、8,700円(税抜き)という価格が書かれていました。
父さんは前に体を悪くして今は自宅で療養しています。母さんは週に3日ほどパートに出ていますが、心臓を悪くして休みの日は指圧に通っています。8,700円を稼ぐのに、母さんが一体どれだけ大変な思いしなければならないのか考えると涙が出た。
これからはもっと自分の事にお金を使ってくれと事有る毎に言うのだけれど、母さんはいつまで経っても僕に構いたがる。もうすぐ40になろうかというのに、それでも自分の子供は可愛いのでしょうか。しもやけなんかツバつけときゃ直るのに。こんな金使って。なんて野暮な事は言わず、喜んで貰うのが母さんにとっては一番嬉しい事なんだろう。「ありがとう」と言って貰っておいた。
代わりに「これで何か美味しい物でも食べなよ」って一万円札を握らせるくらいの事をしても良い歳なのに、僕の財布の中には40円しかなくて、僕は元気な姿を見せる事しか親孝行が出来ません。不甲斐ない息子でごめんなさい。
ありがとう。明日からまた頑張るよ。