シングル スマイル

目指すのはジャンガリアンな生き様

広告の会社、作りました  中村航

 

 

 

いい仕事、いい会社ってなんだろう? 若手デザイナーと敏腕(変人)コピーライターのコンビが大会社に挑む! 突然会社の倒産を告げられ、いきなり無職になってしまったデザイナーの遠山健一。 安定した転職先を求めたはずが、飛び込んだ職場はコピーライター・天津孔明の個人事務所――まさかのフリーランスだった。 「じゃあまずは、フリーでばんばん仕事してさ、そのうち法人化も考えていこうよ。晴れて法人化したら、Youは“遠山副社長”ってことで」 「えええ?」 変わり者の天津とコンビを組む事になった健一。そしてやってきた仕事は、大企業とカタログのデザインをかけた“出来レース”のコンペで・・・・・・!? 

★★★☆☆

 

 

レビュー

中村航の作品が好きで毎作読んでる。失業状態、喪失状態からの再生、という設定は他作品、「リレキショ」や「ぐるぐる回るすべり台」などでも見られるので特に新しくは無い。本作は失業からフリーを経て起業、という流れのなか主人公が成長していく。

相変わらず軽妙で読みやすい反面、毒が無い。全く無い。今時児童書でももっとエグみが有りそうなものだけど、登場する人物は皆良い人だし展開も泥沼にはならない。そういう点では物足りないけど、そういうものが望みなら他に適した作者が沢山居る。

主人公の仕事のパートナーとなる天津に関してはもう少し深堀しても良いんじゃないかと思った。只の能天気な人みたいで勿体ない印象。

文章量も少なく毒も無いので1日で読める。気軽に読める反面、読後に残る物も少なかった。ラストは違う展開でも良かったんじゃないかと思う。何だか自分でも起業したくなるけど、現実社会は魑魅魍魎がはびこるえげつない社会なので僕が起業したら即病んで倒産するだろうから小説で読むくらいで丁度良い。