ウラシマトンネルって、知ってる? そのトンネルに入ったら、欲しいものがなんでも手に入るの」
「なんでも?」
「なんでも。でもね、ウラシマトンネルはただでは帰してくれなくて――」
海に面する田舎町・香崎。
夏の日のある朝、高二の塔野カオルは、『ウラシマトンネル』という都市伝説を耳にした。
それは、中に入れば年を取る代わりに欲しいものがなんでも手に入るというお伽噺のようなトンネルだった。
その日の夜、カオルは偶然にも『ウラシマトンネル』らしきトンネルを発見する。
最愛の妹・カレンを五年前に事故で亡くした彼は、トンネルを前に、あることを思いつく。
――『ウラシマトンネル』に入れば、カレンを取り戻せるかもしれない。
放課後に一人でトンネルの検証を開始したカオルだったが、そんな彼の後をこっそりとつける人物がいた。
転校生の花城あんず。クラスでは浮いた存在になっている彼女は、カオルに興味を持つ。
二人は互いの欲しいものを手に入れるために協力関係を結ぶのだが……。
★★★☆☆
レビュー
ネットでお勧めのアニメ映画の1つに挙げられていて、原作の小説が有る事を知り読んでみた。
設定は面白かった。ただ、人物描写は均一的で薄く、主人公が置かれる立場も少々感情移入し辛い。後が無い主人公に対し、ヒロインはそこまでのリスクを背負う程の立場でも無く危険なトンネルに挑む理由も薄く感じる。妹が死ぬいきさつも説得力に欠けるので、まず妹の死ありきというのが見えてしまうのが残念。父さん母さんの描写に違和感を感じるのは僕がその世代だからだろう。
設定の割には大きなどんでん返しも無く、大きな挫折をする訳でも無い。ただ、軽快で読みやすくて先が気になる。映画化されるのだから一般的に評価は高いんだろう。
カテゴリーがラノベの様なので、若い世代向けなんだろう。設定の裏側まで深く考察させる様な印象は薄いけど、エンターテイメントとしては面白いので映画を観た方がより楽しめるかもしれない。