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目指すのはジャンガリアンな生き様

かがみの孤城  辻村深月

 

 

 

 

学校での居場所をなくし、閉じこもっていたこころの目の前で、ある日突然部屋の鏡が光り始めた。輝く鏡をくぐり抜けた先にあったのは、城のような不思議な建物。そこにはちょうどこころと似た境遇の7人が集められていた。

★★★★★

 

 

レビュー

久しぶりにもろ手を挙げての★5を読んだ。凄い。めちゃくちゃ面白かった。アニメ化された映画の広告を見掛けて面白そうだな、と思っていた。やっと読めた。

学校に通えなくなった中学生の女の子が主人公。不思議な鏡を通じて謎の城に集められた同年代の男女7人。城の何処かにある鍵を見つけられたら、どんな願いでも1つだけ叶うという。ファンタジー的なミステリーで少年少女が主体でありながら、陳腐さは微塵も感じられない。

何故この7人が集められたのか。案内役のオオカミの面の少女は一体何者なのか。この城は一体何なのか。本当に願いは叶うのか。そして7人はどういう結末を望むのか。散りばめられた幾多の謎めいた伏線が、終盤で一気に回収されていくのは圧巻。

序盤から中盤にかけては、主人公と集められた6人を丁寧に描いて行く。学校に通えなくなった引きこもりなんだから、自由な城に集まったからといっていきなり「うぇーい」とはならないのはリアルだし、互いの距離感も上手く描かれている。7人それぞれが違う性格で、違う問題を抱えている。この辺りはとても上手くて違和感を感じさせないから素直に物語に没入出来る。現実と対比させれば多少出来過ぎな印象も有るけど、あまりにもリアルにすると物語がまとまらないのでこれ位のバランスで丁度良いんだろう。

でもまぁこの手のストーリーって「自由な別世界で仲間と過ごした事で共に成長出来たから現実世界に戻っても私はもう大丈夫」的な展開で終わるんだろ。願い事よりも仲間たちとの経験や思い出を優先させるんだろ。って先の展開が読めてしまうな。と思っていたら、全然違う展開に持って行く。しかも全く違和感を感じさせずに。あれ?え?マジ?そうなっちゃうの?的な。エピローグまでもが伏線を回収していく。読み終わった時に、「あぁ・・・そうかぁ。」とうならされた。

願い事で無敵になって現実世界を無双する的な安易な展開じゃないし、仲間が出来たから万事OK的な展開でもない。この辺りの出来は良くあるラノベやなろう系とは一線を画す。だから良かった。凄く良かった。

児童書版も出版されているし、アニメ化もされているけど、大人が読んでも充分面白い小説だった。

 

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