シングル スマイル

目指すのはジャンガリアンな生き様

設備の自動化とセーフティネット

 

 

 

出勤すると、新型コロナウイルスの影響で欠員が多数出て工場の操業が出来ないから応援に入ってくれないか?と言われた。僕で出来る事ならやりますよ、と答えると、割り振られた作業はただひたすら材料を投入する作業だった。

カップに材料をすくい、機械の投入口に入れる。材料が少なくなったらカップに材料をすくい、機械の投入口に入れる。材料が少なくなったら、っていう作業を就業時間中ずっとやってた。っていうか何で手作業なんだよ!こんなの自動化すりゃ良いじゃないか!というか投入口小さ過ぎだろ!もっと大きくするだけで回数減るだろ!

材料をひたすら入れながら、ホッパー部分はどうしたらいいのか、在荷センサはどうすれば誤作動を防げるのか、そうすると自動化は出来るのか、とか考えてたんだけど、このひたすら材料を入れるだけの作業は実は必要なんじゃないかと思えてきた。この作業を自動化すれば、一人分(に近い)の作業を減らせる。逆に言えば、この作業によって一人分(に近い)雇用を生み出してるとも言える。

以前どこかで「パン工業のアルバイトで一晩中ひたすらバナナを並べるバイトをしていた」という様な話を見掛けた。同様に、ひたすらバナナの皮をむいたり、ひたすらソーセージを並べたりする作業も有るらしい。それらと似た様なもので、ひたすら材料を投入する作業。僕には気が遠くなって頭を抱えてしまいそうな作業に見えて、実は需要が有るのかもしれない。そういう作業しか出来ない人とか、そういう作業の方が良いという人とか。単純作業に見えて実は繊細だったり、ノウハウが有ったり、手先の器用さを求められたりするケースも有るかもしれない。だけどコンビニやマクドナルドのバイトよりは覚える手順は少なそうで敷居は低いし、何より接客がないからコミュニケーション能力も問われない。決まった時間に来て、決まった手順でバナナを並べれば良い。今日から君も即戦力だ。食品業界にはそんな作業が多そうな印象で何だか前世代的だなと思っていたけど、実は世の中のセーフティネットの一部を担っているのかもしれない。そう考えると、そういう業界は社会福祉に貢献しているのかもしれない。これはこれで良いのかもしれない。

一応ことわっておくが、僕はこれらの単純作業や作業に従事する人達をバカにしたり下に見たりしている訳じゃない。建前では無く本当に職業に貴賤は無いと思ってる。ただ、それぞれに向き不向きが有るというだけで。バナナを並べる人達がいるからバナナのお菓子が食べられる訳だし、機械をメンテナンスする人達が居るからバナナを並べる事が出来て、そしてバナナのお菓子を買ってくれる人が居るから世の中が回っていく。

とか考えていたんだけど、多分経営的には雇用を生み出そうなんて事はさらさら考えてないんだろう。設備を自動化すると、機械が故障すると操業が完全停止する→人手なら代わりの人がフォロー出来る、多品種で生産が少しでも変化すると機械を変える必要が有る→人手なら作業手順を変えるだけで良い、機械では処理が困難な材料のバラつきが有る→人手ならバラつきが有っても処理出来る、という様な理由で人を使った方が結果的に安上がりだからなんだろう。

高温に曝される作業とか、低温に曝される作業とか、危険に曝される作業なんかは自動化した方が良いと思う。ただ、何もかもやみくもに自動化してしまって良いのか?とも思う。だけど単純作業ほど自動化はしやすく、コストダウンの効果を上げやすい。そのうちひたすら材料を投入するだけの作業も無くなってしまうかもしれない。