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目指すのはジャンガリアンな生き様

バルバロ!の孝志くん

 

 

バルバロ!という漫画の単行本が発売されたので買いました。

 

 

風俗(ファッションヘルス)で働く3人の女性がメインキャラクターで、性癖や煩悩とか人間の内側というか裏側というか、そういう人間の陰の部分を描いているんだけど、コミカルな描写になっているので陰鬱とした気分にはならない。

 

元々はたまたまネットで見掛けたwebコミックを読んだのがきっかけ。

comic-action.com

無料の時に数話読んだんだけど、コミカルなんだけど妙に生々しいというか実在の人物を描いているんじゃないか?と思うほど描写が細かい。登場する人物が均一的ではなくて、それぞれがちゃんと別々の人格、性格になっているのは感心させられる。なかなか凄い漫画だ。ただ、面白いけど単行本を買うまでもないと思っていた。孝志くんを読むまでは。

 

孝志くんというのは、メインキャラクターのうちの1人まゆみちゃん(コミック表紙絵の女性)の旦那さん。何故か離婚調停中。天真爛漫な感じのまゆみちゃんに対し、孝志くんはめっちゃ無口で暗い。全く相反する性格の人物なんだけど、この陰鬱とした孝志くんを見事なまでの解像度で描いてくる。この描き分けは凄い。

という感心から単行本を買った訳じゃない。孝志くんが僕だからだ。例えばバスの乗り方でマゴつく所とか、座席に座るかどうかで悩む所とか、待ち合わせまでに疲れてしまうとか、店員を呼ばなくても注文出来るシステムだと嬉しいとかそういう状況が描かれているんだけど、あれ?これ僕じゃね? 作者がどういう人物なのか知らないけど、単なる挙動だけではなく心理描写まで緻密に描いてくるのは驚きであり、また僕の心情を読み透かされている様でもある。

 

いや、ほんとマジで1980年代~1990年代は辛かった。陽キャとお笑いと破天荒さがウケた時代だったから。東京オリンピックの開会式楽曲を担当するはずだった小山田圭吾が過去のイジメ問題で降板した事が話題になったけど、まさにあんな感じな世の中だった。今でこそ陰キャもオタクも市民権を得ているけど、当時陰キャでオタクでヒョロガリだった僕は、コンプレックスに苛まされ続けた。ちょっと悪ぶってみなければ、とか、何か面白い事を言わなければ、とか事有る毎にプレッシャーだったんだけど、そうそう簡単に性格を替えられるもんじゃなくて余計に滑稽になる。当時はコミュニケーションツールは固定電話しかなく、しばらくしてやっと携帯電話が普及し始める頃だけど、つまりリアルタイムで会話しなければいけない。メールやSNSなら文章を考える余裕が有るけど、リアルタイムでの会話では即興性が必須なのでロクに話す事も出来ず電話も苦手だった。今でも電話は苦手だけど、当時は知り合った女性に電話番号を聞き出し、相手の自宅の固定電話に電話を掛けなければならない。出るのが本人なのか、お父さんなのかお母さんなのかも分からない。めちゃくちゃハードルが高かった。

奥さんと付き合い始めた頃、「別に話さなくても良い」と言われた。それが救いだった。今でも夫婦間で饒舌ではない。車の運転中も、食事中も無口な時が多い。今でも奥さんが「話さなくても良い」と思っているか、「会話も出来ないつまらん男だ」と思っているかは分からない。「話さない方が良い」とは思っていないと願いたい。

 

そんな過去を思い起こされてヘコみもするけど、コミックはコミカルに描かれているのであまり嫌味な感じはしない。孝志くんが前向きな展開になってくれると僕も嬉しい。なので多分2巻も買う事になる。