始動性の悪さはピストンリングの影響かもしれない、という事で分解したもののバルブも悪そうだ、というのが前回の話。
バルブは何とかなりそうな感じだけどバルブの摺り合わせをしたのにも関わらず圧縮漏れを起こす。
再度バルブの摺り合わせを行う。バルブの方は当り面が随分と綺麗になったけど、エキゾースト側のバルブシートが荒れている。しっかりと摺り合わせを行ったものの、これはシートカットし直さないと漏れが止まらないんじゃないか?
と思ったら止まった。が、見た目は綺麗な吸気側がまだ漏れる。なので再度バルブを分解し、摺り合わせし直す。
結果、摺り合わせ3回目で何とか止まった。もうダメかと思ったのに、バルブの摺り合わせで圧縮漏れ直るもんなんだなぁ。と感慨深く車屋さんに話すと、最近はあんまり漏れないからバルブの摺り合わせはほとんどやらない、と言われた。え?そんなもんなの?もしかしてこのXRの程度が悪かったの?ビッグシングルだから条件が厳しいの?
一番の懸念だったシリンダーヘッドが何とかなったので、組み戻す。その前にシリンダーを綺麗にしておく。ガサガサに荒れた表面にサンドブラストを掛けて、耐熱シルバーで塗装する。
シリンダーを外す際にうっかり割ってしまった冷却フィンも補修しておく。小さな破片を狭い隙間で溶接でくっ付けるのは困難なので、ベロメタルでくっ付ける。「冷間溶接」などとたいそうな銘打ってるけど要は2液性エポキシ系接着剤なんでしょ?と思いきや結構ガチガチになる。通常のエポキシ系接着剤と違い金属粉が入っているので、冷却フィンの補修には向いていそう。ただ通常の溶接に比べると熱伝導率は悪そうだ。
シリンダーの準備が出来たのでピストンを戻す。ピストンに新品のリングを組む。新品のピストンリングは1stと2ndが同じ刻印で、どちらが1st(上側)か2nd(下側)か分からない。けど明らかに色が違うので、区別が有るはず。多分茶色の方が耐熱的な色っぽいよな、なので1stリングかな?と悩んでいると、サービスマニュアルに1stリングと2ndリングの見分け方が書いてあった。1stは断面が上下共に面取りして有る。2ndは下側のみエッジが効いた形状(なので組み付けに上下方向が有る)。
ピストンリングを組んで、コンロッドに組み付け。リングの切り欠きを120°毎に割り振る。
シリンダーを載せる。シリンダー重たくて大変。まぁ4気筒よりは遥かにマシだけど。組んでしまってから、クランクケース側のダウエルピンと、シリンダーヘッド側のダウエルピンを入れ間違えた事に気付く。これをまた分解するのかよ・・・と思ったら、両方とも同じみたいだ(部品番号が同じ)。なのでこのまま組んでしまう。
シリンダーを固定しようと思ったら、ボルトが1本入らない。
どうもネジが傷んでいる様。外す時にめちゃくちゃ固かったので、クランクケースのネジ穴と固着していた様。
ネジ山を修正する。M10×P1.25の細目。細目のダイスが有って良かった。ボルトはこれで良いけど、クランクケース側の雌ネジも傷んでいる様でネジが渋い。改めてシリンダーを外すのが面倒なのと、M10の細目のタップが無いのでそのままねじ込んでしまった。燃焼の力が掛かる所なのでちゃんと直しておきたいのだけれど、次回直そう。もう2度とやりたくないけど。
ロッカーアームの組み戻し。ロッカーアームは別に分解しなくても良かったんだけど、ヘッドカバーを塗装したかったので外した。ロッカーアームが8個もあるから大変。
シリンダーヘッドを載せる。カムチェーンテンショナのスプリング部分は、カムチェーンスライダーよりも外側になる(スライダーをチェーンに押し当てるので)。何も考えずにそのまま組んだらスライダーの内側になってしまい、カムチェーンが組めない。
再度シリンダーヘッドを外すのが面倒なので、カムチェーンテンショナを外して組み直す。カムシャフトとカムチェーンを組む。テンショナーを緩めながらカムチェーンを組まないといけないので結構大変。カムシャフトにスプロケットを組み付けた状態ではどうしてもカムチェーンが掛けられないので、スプロケットは外した状態でカムチェーンを掛けて、位置合わせした後にカムシャフトとスプロケットを固定した。
ヘッドカバーを組む。赤色に塗装したR仕様。これからこのマシンはXR591Rだ。ヘッドカバーのガスケットを買うのを忘れていた。古いガスケットを再使用する。
タペット調整をする。という段になって、タイミングの合マークが複数有る事に気付く。タペット調整は「T」の刻印が有る合マークに合わせるんだけど、カムチェーンを組む時も同じく「T」の合マークに合わせる。あれ?カムチェーン組む時に「T」の刻印なんか有ったっけ?違うマークに合わせると当然バルブタイミングが狂ってしまう。仕方なく再度ヘッドカバーを外して確認。やっぱりズレている。「T」の合マークでカムチェーンを組み直す。
ここまで組んだら後は戻すだけなんだけど色々と無駄な作業があって時間切れ。
塗装するにあたりサンドブラストを掛けたんだけど、ブラストは細かな所まで研磨出来るので便利な反面、処理後は研磨剤まみれになる。シリンダーは只の筒なので後処理が楽だけど、シリンダーヘッドやヘッドカバーは入り組んだ形状なのでしっかり洗浄しないと砂が残りやすい。エンジン内部に研磨剤が残った状態なんてちょっと想像したくない。
塗装して腰上は綺麗になったけど、耐熱塗料は溶剤に弱い。パーツクリーナーが付着すると塗装が剥げる。パーツクリーナーは整備で良く使うので困る。
作業開始から2ヵ月経ってしまった。もういい加減終わりにしたい。
今回の出費
耐熱塗料 アストロ耐熱スプレー赤 1,320円
送料 560円
つづく
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